Aそれらは共に当てにならぬ指針である。出生は外見的により[#「より」に傍点]規則正しく見えるので、政治的統計家は一般に、死亡に優先してこれを彼らの推算の基礎として採用している。ネッケルは、フランスの人口推算に当って、伝染病や移民は死亡における一時的差異を惹起すものであり、従って出生が最も確実な基準である、と云っている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。しかし記録簿における出生の外見的な規則性という事情こそが、時として大きな誤りに導くであろう。もしある国において、二、三年まとめての埋葬の記録簿を手に入れ得るならば、疫病《ペスト》や致命的伝染病は常に自《おのずか》らわかるであろう。それはその間には死亡が突然増加し、その後には更にいっそうそれが減少するからである。吾々はもちろんかかる外見からして、極めて短期間における大きな死亡率をそのまま包含してはならぬことに気がつく。しかし、出生の記録簿には、この種の指導は何もない。そして一国がその人口の八分の一を疫病《ペスト》によって失った後には、その後五、六年間の平均は出生数の増加を示し、従って吾々の計算は、人口の最も少かったちょうどその時に最大の人口を与えることになるであろう。これはジュウスミルヒの表の多くにおいて極めて顕著に現われ、なかんずくプロシア及びリトアニアに関する表において著しい。この後者の表は後の章に掲載するが、それによると、人口の三分の一を失った翌年には出生が著しく増加し、そして五箇年間の平均ではほとんど減少を示していないが、しかもこの時たるや、もちろんこの国が、以前の人口をほんのわずか恢復し得たばかりの時なのである。
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 1)[#「1)」は縦中横] De l'Administration des Finances, tom. i. c. ix. p. 252. 12mo. 1785.
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 吾々は実際、一七〇〇年以来|英蘭《イングランド》に起った何らかの異常な死亡率については知るところがない。そして前世紀における出生及び死亡の人口に対する比率は、大陸の多くの国における如き大きな変化を経験しなかった、と想像すべき理由がある。同時に、既知の疾病流行季は、その暴威の程度に比例して、同様の結果を生じたことは確かである。そして近年死亡率に見られる変化は、吾々をして、同様の変化が以前には出生に関して生じたのであることを信ぜしめ、そして、現在は正しいとわかっている比率を過去または将来の時期に当てはめるに当っては、極めて注意深くしなければならぬことを、吾々に教えるのである。
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    第九章 英蘭《イングランド》における人口に対する妨げについて(続)(訳註――本章は第五版に新たに設けられたものである。)

 人口条令による一八一一年の報告は疑いもなく異常な結果を現わした。それは加速度的な大増加率を示し、都市の増加と工業に従事する人口の比率の増加にもかかわらず、人民の健康が大いに増進されたことを示すものである。かくしてそれは、一国の資源が急速に増加しつつある時には、ほとんどいかなる重圧の下においても、人口は直ちに増進を開始するということの、新しい適齢を提供したのである。
 一八〇〇年の人口の量、並びに記録簿に与えられた出生、死亡、結婚の比率は、出生の死亡に対する比率が四対三であり、死亡率が四〇分の一である場合に生ずべき増加以上の比率で、人口がしばらくの間増加したことを、明かに示している。
 これらの比率は、一国の人口に毎年一二〇分の一を加え、したがってそれが継続するとなれば、第十一章の第二表によれば、八三・五年ごとに人口を倍加せしめるであろう。これは、富裕にしてかつ人口稠密な国においては、増加よりはむしろ減少が合理的に期待される増加率である。しかし、かくの如き減少は少しも起らず、一八一〇年までは著しく加速度的に進んできたことがわかるのである。
 一八一〇年には、各教区からの報告によれば、陸海軍人等を三〇分の一加えて、英蘭《イングランド》及びウェイルズの人口は、一〇、四八八、〇〇〇と測定されたが1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、これは、同様にして測定された一八〇〇年の人口、九、一六八、〇〇〇と比較すると、十年間の増加が、一、三二〇、〇〇〇であることを示すものである。
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 1)[#「1)」は縦中横] See the Population Abstracts published in 1811, and the valuable Preliminary Observations by Mr. Rickman.
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 十年間の登録洗礼数は、二、八七八、九〇六、登録埋葬数は一、九五〇、一八九であっ
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