た。従って出生超過は九二八、七一七で、これは右の二つの人口実測の示す増加数に遠く及ばない。この不足は、一八〇〇年の実測が事実より低すぎたか、出生及び埋葬の登録が不正確であったか、またはこれら両原因が一緒に働いたか、そのいずれかによってのみ、生じ得たものである。けだし、一八〇〇年の人口が正確に測定され、そして記録簿が一切の出生及び埋葬を包含しているならば、両者の差額は真の人口増加に及ばないよりむしろこれを超過するはずであり、換言すればそれは陸海軍等に属して国外で死んだものの数だけちょうどこれを超過するであろうからである。
 右の結果を生ずるについては両原因とも関係しているのであり、ただし後の原因すなわち記録簿の不正確の方が遥かに大きく関係がある、と信ずべき理由がある。
 この世紀を通じての人口を測定するにあたり1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、出生は常に人口数に対して同一の比率をもつものと想定されている。しかしかかる推定が、異る遠く隔たった時期の一国人口の極めて不正確な測定にしばしば導くものであることは、既に見たところである。しかしながら、一八〇〇年ないし一八一〇年において、人口は極めて急速に増加したことが知られているから、おそらくこの時期に出生率は本質的には低減しなかったのであろう。しかしもし、最後の実測が正確と仮定して、一八一〇年の出生を一八〇〇年の出生と比較するならば、その結果は、一八〇〇年の人口はその年の実測の示すよりも大である、ということになるであろう。
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 1)[#「1)」は縦中横] Page xxv. of the Preliminary Observations on the Population Abstracts, printed in 1811. にあるこの世紀を通じての人口の表を参照。
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 かくて一八一〇年に至る五箇年間の出生の平均は二九七、〇〇〇で、一八〇〇年に至る五箇年間の出生の平均は二六三、〇〇〇である。しかし、二九七、〇〇〇対二六三、〇〇〇の比をもってすれば、出生率を同一と仮定すれば、一八一〇年の人口一〇、四八八、〇〇〇に対して九、二八七、〇〇〇が一八〇〇年の人口でなければならず、これは人口実測の結果たる九、一九八、〇〇〇人とは異ってくる。一七九五年ないし一八〇〇年の人口増加が、表によれば、それ以前のたいていの五箇年間に比し異常に小さいことも、更に注意しなければならぬ。そして記録簿を一瞥すれば、一七九五年以後の五箇年間の出生率が、一七九六年及び一八〇〇年の減少数を含んで、一般的平均以上であるよりは以下であるらしいことがわかる。これらの理由により、またこの問題に関する一般的印象によると、おそらく一八〇〇年の実測が事実以下なのであり、そしてたぶん当時の人口は少くとも、九、二八七、〇〇〇、すなわち報告にあるよりも約一一九、〇〇〇だけ多かったのだと考えて、間違いないであろう。
 しかしこのように推定してみても、記録簿に現われている全十年間の死亡以上に出ずる出生の超過も、また出生の死亡に対する比率も、いずれも九、二八七、〇〇〇から一〇、四八八、〇〇〇に至る増加を説明するに足りないであろう。しかもこの増加が右の二つの時期の出生率で示されているよりも遥かに少いということは、おそらくなかろう。従って、非常に不正確なことがわかっている出生及び死亡の記録簿、なかんずく出生の記録簿における、脱漏について、必ずや若干の斟酌をしなければならぬのである。
 結婚の記録簿にはほとんどまたは全く脱漏がないと信ずべき理由がある。そしてもし吾々が、出生の脱漏を六分の一と仮定すれば、これは出生の結婚に対する比率を四対一に維持し、しかもこの比率は、他の根拠1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]から十分確証されるように思われる。で、もし右の仮定が許されるならば、死亡の脱漏をもって、十箇年間の死亡以上に出ずる出生の超過を、出生の超過によって測定された人口増加と一致せしめる如き数である、と考えてよかろう。
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 1)[#「1)」は縦中横] See the Preliminary Observations on the Population Abstracts, p. xxvi.
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 十箇年間の登録出生数は、前述の如く、二、八七八、九〇六であり、これを六分の一だけ増加すれば、三、三五八、七二三である。登録埋葬数は一、九五〇、一八九であり、十二分の一を増加すれば、二、一一二、七〇四となる。前者から後者を引けば、一、二四六、〇一九が得られるが、これは出生の超過であり、十箇年間の人口増加であって、これを一八一〇年の修正人口、九、二八七、〇〇〇人に加えると、
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