の期間の比較的初期におけるより[#「より」に傍点]大なる一般死亡率を斟酌しても、』
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 『人口条令の結果に関する諸観察』には、英蘭《イングランド》における平均寿命が、一七八〇年以来、一一七対一〇〇の比例1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]で増加したことがわかる、とある。かかる短期間におけるかかる大きな変化は、もし事実であるならば、極めて驚くべき現象である。しかし私は、この埋葬率の減少の全部が健康の増進より生じたものではなく、一部分は、この時期以来の我国の外国貿易の極めて急速な増加により、また多数の人間が陸海軍籍に入って不在となりこの大軍の勢力を不変に維持するため必要な不断の新兵の補充により、外国で死亡するものの数が必然的に増加しなければならなかった事実によって、惹起されたものである、と考えたい。この種の不断の人口流出は、確かに、報告に見られる結果を生ずる傾向があり、そして埋葬を停止的ならしめておいたであろうが、他方出生及び結婚は多少急速に増加していったのである。同時にまた、一七八〇年以来の人口の増加は議論の余地なきところであり、そして現在の死亡率は異常に低いのであるから、私は依然として、右の結果のはるか大部分は健康の増進に帰せらるべきものである、と信じたいのである。
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 1)[#「1)」は縦中横] P. 6.
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 三六分の一という死亡率は、おそらく、この世紀全体の平均としては低過ぎるであろうが、しかし三六分の一という死亡率に基づいて計算された一二対一〇という出生対死亡の比率は、一国の人口を一二五年にして倍加せしめるものであり、従ってこの世紀全体に対する平均たり得る大いさの、出生対死亡の比率である。最近の計算でこれ以上急速な増加を示すものはない(訳註)。
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〔訳註〕このパラグラフがこの形になったのは第三版よりのことである。第二版ではこれは次の如くあった、――
『もし吾々が、一七八〇年頃の死亡率をもって、現在の如く四〇分の一ではなく三六分の一と仮定すれば、これは、一一七対一〇〇という如き高い比率ではないとしても、健康状態の増進を大きく斟酌したことになろう。そして出生率が現在とほとんど同一であったと仮定すれば、一七八〇年頃の出生は死亡に対し三六対三〇すなわち一二対一〇であったことになろうが、この比率は、三六分の一という死亡率に基づいて計算すれば、一国の人口を一二五年にして倍加せしめるものであり、従ってこの世紀全体に対する平均たり得る大いさの、比率である。我国の人口を最高に見積っても、それは革命当時の二倍とはならない。』
[#ここで字下げ終わり]
 しかしながら吾々は、この出生対死亡の比率、または出生及び死亡の総人口に対する何らかの仮定的比率が、この世紀を通じてほとんど斉一に継続したと考えてはならない。相当の期間記録されたあらゆる国の記録簿を見れば、時期を異にするにつれ著しい変動が生じていることがわかる。ショオト博士は、この世紀の中頃に、出生の死亡に対する比率を一一対一〇と見積った1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。そしてもし出生が同じ時期に人口の二十八分の一であったならば、死亡率は三〇・八分の一という高率であったのである。吾々は現在出生の死亡に対する比率は[#「比率は」は底本では「比は率」]一三対一〇以上であると想像している。しかしもし吾々がこの比率をもって、次の百年間の人口増加を測定する指標とするならば、吾々はおそらく非常に大きな誤謬に陥るに違いない。吾々は、我国の資源が、一三対一〇というが如き永久的な出生対死亡の比率を許す如き速度で、相当の期間増加するとは――実際この比率が主として大きな国外流出によって惹起されたのでない限り――合理的に想像することは出来ないのである。
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 1)[#「1)」は縦中横] New Observ. tables ii. and iii. p. 22 and 44 ; Price's Observ. on Revers. Paym. vol. ii. p. 311.
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 蒐集し得た一切の資料からして、英蘭《イングランド》及びウェイルズの出生の総人口に対する比率は一対三〇と推定してきた。しかしこれは、ノルウェイ及びスイスを除けば、この観察を行うに当って今まで出てきたいかなる国に生じたよりも小さな比率である。そして在来、大なる出生率は活力あり繁栄せる状態の最も確実な徴標であると考えるのが、政治統計家の常であった。しかしながら、こうした偏見は永続しない方が望ましい。アメリカやロシアのような事情にある国では、またはその他の国である大きな死亡率を生じた後では、大きな出生率は
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