り]
 この条令に基づく結婚の報告は、記録簿のいかなる他の部分よりも、不正確の疑いを蒙るおそれの少いものということになっている。
 ショオト博士は、その『都市及び農村死亡表に関する新観察』New Observations on Town and Country Bills of Mortality において曰く、私は、『我国民の卓越せる裁判官たる観察をもって、人類の成長及び増加は、人類の性質における何ものかによるよりも、人民が結婚するに当って感ずる戒慎的困難により、家族扶養上の煩苦と経費との予想により、制限されるところが多い、と結論する。』そしてこの観念に従って、ショオト博士は、結婚せる貧民を養うために、独身生活者に重税と科料を課することを提唱している1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。
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 1)[#「1)」は縦中横] Id. p. 247.
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 この卓越せる裁判官の観察は、出生を阻まれる数に関しては、全く正当である。しかし未婚者は処罰せらるべし、という推論はそうとは思われない。自然の増殖力はなるほど我国では十分に発揮させられているどころではない(訳註)。しかも吾々が、労働の価格が大家庭を維持するに足りないことや、貧困から直接間接に起る死亡の数を考え、更にこれに加うるに、我国の大都市や工場や救貧院で夭折する無数の子供のことを考える時には、吾々は、もし年々生れるものがこの夭折によって大いに減少されないとすれば、成人となるべき追加数に仕事と食物とを与えるために、労働の維持のための基金は、従来我国で見られたことのない速度で増加しなければならぬということを、承認せざるを得なくなるのであろう。
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〔訳註〕この『自然の増殖力はなるほど我国では十分に発揮させられているどころではない。』という一文は、第三版にはじめて現われたものであり、第二版ではこの箇所は次の如くなっていた、――
『………という推論はそうとは思われない。思うに、我国では、自然の増殖力の半ば以上は発揮させられておらないが、しかも国が適当に養い得る以上の子供がいる、というのは、真を距《へだた》る極めて遠いものではないであろう。
『もし吾々が、年出生をもって、短期間にはしばしば大陸に現われ1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]またアメリカの多くの地方ではおそらく絶えず現われている比率たる、人口の二〇分の一を占めるものと仮定し、また二〇歳以下の死亡をもって三分の一と認める――ショオト博士によれば、ある地方ではこの死亡はわずかに五分の一または四分の一に過ぎないのであるから2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]、三分の一というのはほどよい仮定であるが――ならば、またもし、すべてのものが、決して早過ぎはしない二〇歳という年齢で結婚するとすれば、この場合人口の三〇分の一が年々結婚することとなろう。換言すれば、現在の如くに一二三人につき一結婚ではなく、六人につき一年結婚があることになろう。従って、我国では自然の増殖力の半ば以上は発揮させられていない、と立派に云えるのである。しかも吾々が、…………
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『1)[#「1)」は縦中横] プロシアでは疫病《ペスト》流行後に、第一の異常の年を除去すれば、五年間の平均で、出生の総人口に対する比率は一対一八以上であった。(Table iv. page 253.)ニュウ・ジャアシイでは、プライス博士によれば(Observ. on Revers. Paym. vol. i. p. 283.)それは一対一八であり、また奥地の植民地ではおそらく一対一五であった。
『2)[#「2)」は縦中横] New Observ. on Bills of Mortality, p. 59.』
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 従って第三版以後では、数字による例解が省略された上で、二つのパラグラフが一つにまとめられたのである。
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 従って独身者や晩婚者は、かかる行動によって現実の人口を多少でも減少せしめるものではなく、単に、しからざれば過度となるべき幼少死亡率を低減するだけのことであり、従ってかかる見地からすれば、何らのひどい非難や処罰に価するものではないと思われるのである。
 出生及び死亡の報告には脱漏があると想像されているが、これには十分の根拠がある。従ってそれが総人口に対してとる比率を幾分でも正確に見積ることは困難であろう。
 もし英蘭《イングランド》及びウェイルズの現在人口を、一八〇〇年をもって終る五箇年間の平均死亡数で除すならば、死亡率はわずかに四九分の一ということになるであろう1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]
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