はめると、一八一三年ないし一八二〇年の増加を説明するに必要なところ以上となるであろう。しかしもし吾々が、出生の脱漏は一〇分の一、死亡は二〇分の一と想像すれば、出生の人口に対する比率は二九・一分の一、死亡の比率は三八・一分の一となるであろう。これらの比率によれば、死亡以上に出ずる出生の年超過の人口対比は一対一二三となり、これは、国外死亡を若干斟酌すれば、一八一三年及び一八二〇年の人口実測が等しく真に近いと仮定して、この両時期の間にフランスに生じたと同一の倍加期間または同一の増加率を与えるであろう。
出生及び死亡の報告の脱漏を、右の如く斟酌しても、死亡率は以前に蒐集された記録簿のいずれにおけるよりも低いことは注意に価する。そして出生率もまた、革命前よりも、また前述の第八、第九、第十年における三〇県からの報告におけるそれよりも、小であるから、そしてまた、第九年の一般報告には大きな脱漏があり、また一八一三年の五〇県からの報告の脱漏はそれ以後の記録簿における脱漏よりも少くはないと信ずべきあらゆる理由があるのであるから、近年の人口増加率の逓増にもかかわらず、出生率は減退してきていると考えて差支えなかろう。この増加率の逓増は、革命以来の労働階級の境遇の改善によって惹起され、またおそらくは種痘の採用によって助勢されたところの、死亡率の減退によるものの如く思われる。それは、増加率の累進が出生率の低減と全く両立し得るものであり、またかかる出生率の低減は、いかなる一つまたは多くの理由によるものであろうととにかく死亡率が減少した場合に起る可能性の多いものであることを、示すものである。
異れる時期における諸国の人口を出生の増加によって測定することの[#「ことの」は底本では「との」]誤りなることを[#「ことを」は底本では「こことを」]示す、興味ありかつ適切な例証として、次のことは注目に価しよう。すなわちネッケルによれば、フランスの年出生は、一七八〇年に終る六箇年を平均して、九五八、五八六であった。ところが一八二二年に終る六箇年の出生は、前述の如く九五七、八七五である。だから出生によって人口を測定すれば、四二年間に人口は増加したよりはむしろ減少したように見えるであろうが、しかるに、実測によれば、人口はこの期間ほとんど四百万増加したと信ずべきあらゆる理由があるのである。
[#改ページ]
第八章 英蘭《イングランド》における人口に対する妨げについて
我国の社会をほんの瞥見しただけで、あらゆる階級を通じて、人口に対する予防的妨げが極めて著しく行われていることを、吾々は嫌でも認めざるを得ぬ。主として都市に住んでいる上流階級のものは、不正な性関係に耽る便宜があるので、しばしば結婚の志向をもたない。また他のものは、家族をもつと仮定すると費用がかかると考え、また楽しみを奪われると考え、結婚をしないでいる。財産が多い時には、かかる考慮は確かに些細なことであるが、しかしこの種の予防的予見は、下層に下るに従って、重大な考慮を払わなければならなくなるのである。
辛うじて紳士階級の交りが出来るだけの所得しかない高等教育を受けた人は、もし彼が結婚して家族をもつならば、一切の従来の交際を絶たざるを得なくなることを、絶対に確信しているに違いない。教育ある人が当然に選択する婦人は、彼と同じ習慣と感情の中に育てられ、彼女が結婚によって落ち込まざるを得ぬ社会とは全く異る社会の親しい交渉になれている婦人である。男たるものはその愛情の対象を、おそらくは彼女の習慣と志向とに相反する地位に置くことに、容易に同意し得るであろうか。社会の階段を二、三段、ことに教育が終りを告げ無知が始まるあたりで、下ることは、一般人には、幻想的な悪とは考えられず現実的な悪と考えられるであろう。もし社交が望ましいものとすれば、それは確かに自由な平等な相互的な社交で、利益を受けると共に与える社交でなければならず、被護者が保護者に対し、貧民が富者に対するが如き、社交であってはならない。
かくの如き顧慮は、確かに、かかる階級にある多くのものが、年若くして愛着を感ずる志向に従うのを妨げているのである。しかし他のものは、情欲がもっと強いかまたは判断力がもっと弱いために、かくの如き顧慮を無視する。そして道徳的な愛というが如き悦ぶべき感情が時にそれに伴う一切の害悪を償ってなお余りありという具合に行かぬとすれば、それは実際つらいことであろう。しかし私は恐れる、かかる結婚の結果は、慎慮に富む人の予言を否定するよりはむしろ確証することが普通であることを、認めなければならないことを。
商人や農民の息子達は結婚しないように勧められ、そして彼らが家族を養い得べきある商売か農場を手に入れるまでは、この忠告に従う必要があることは
前へ
次へ
全109ページ中47ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
吉田 秀夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング