漏がおそらくあろう、と考えている。彼は更に、一平方リイグ当りの人口比率は旧フランスでは一、〇一四であって一、〇八六ではないことを、証示している。しかしもし、記録簿に脱漏がありまた人口が過大に見積られている、と信ずべき理由があるのならば、真の比率はここに示したものとは本質的に異るであろう。
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 しかしこれらは事実上、わずか一箇年の比率に過ぎず、これからは何ら確実な推論を下すことは出来ない。これらの比率はまた、常により[#「より」に傍点]小さな出生、死亡、結婚の比率を有っていたかもしれぬ昔のフランスより三、四百万大きい人口にも適用されている。更にまた、『議事要録』中の若干の記述によれば、記録簿が非常に注意深く記録されてはいなかったように思われる節が非常に多い。かかる事情の下においては、右の比率は数字の含意するところを立証するものとは見做し得ないのである。
 『統計論』の後に出版されたプウシェの『統計学要論』〔Statistique Ele'mentaire〕 によれば、共和制第十一年に、出生の総人口に対する平均比率を確かめるという表面の目的のために、シャプタル氏の命の下に一つの調査が行われた1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。そして共和制第九年の報告の直後に、かかる調査が行われたことは、明かに、大臣が前記報告を正確と考えなかったことを証するものである。この目的を達するために、最も正確な報告を出しそうな村が、フランス全土に分布する三〇県から選ばれた。そして第八年、第九年、第十年分のこの報告は、出生率二八・三五分の一、死亡率三〇・〇九分の一、結婚率一三二・〇七八分の一を示している。
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 1)[#「1)」は縦中横] P. 331. Paris, 1805.
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 プウシェ氏は、人口の出生に対する比率は、この場合、以前に考えられていたより遥かに大であるけれども、この計算は実際の計測から得られたものであるから優先的に採用さるべきものと思う、と述べている。
 一八一三年に政府が発表した報告は、昔のフランスの人口を二八、七八六、九一一人としているが、これは、第九年の人口見積り二八、〇〇〇、〇〇〇と比較すると、一八〇二年から一八一三年に至るまでの一一年間に約八〇〇、〇〇〇の増加を示している。
 結婚の報告はなく、出生及び死亡の報告もわずかに五十県分だけである。
 この五十県では、一八〇二年ないし一八一一年の十年間に、出生総数は五、四七八、六六九、死亡総数は四、六九六、八五七であり、これは一六、七一〇、七一九の人口に対し、出生率三〇・五、死亡率三五・五を示すものである。
 これら五十県は、それが最大の増加を示しているから選ばれたのだ、と考えるのは当然である。実際それは、第九年の計測の時から県の全部において生じた増加のほとんど全部を含んでいる。従って他の県の人口はほとんど停止的であったに違いない。更に、結婚の報告が公表されなかったのは、それが不満足と考えられたからであり、すなわち結婚の減少と私生児の出生率の増加を示したからであろう、と推測して差支えなかろう。
 これらの報告、及びそれに伴う諸事情からして、革命以前の、及びその後の六、七年間――すなわち早婚[#「早婚」に傍点]が『議事要録』で言及され、『統計学要論』では出生率が二一、二二、二三分の一であると云われた頃――の、真の出生率がどれだけであったにしても、出生、死亡、結婚の比率は今日いずれもかつて想像されていたよりも著しく少い、と結論し得よう1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。
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 1)[#「1)」は縦中横] 一七九二年に、早婚に極めて好都合な法律が通過した。これは第十一年に廃止され、これに代って一法律が発布されたが、これはプウシェによれば(p. 234.)結婚を著しく阻害するものであった。これら二つの法律は、一八一三年以前の十年間の出生及び結婚の比率の小なることを、革命勃発当初の六、七年間それが高くあり得たことと矛盾なく、説明するに役立つであろう。
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 もしこの事実を認めるならば、革命前の人口見積りは不正確であり、そして人口は一七九二年以来増加よりはむしろ減少しているということに、明かになるのではないか、と問うものがある。これに対して私は明確に、そういうことにはならぬ、と答える。出生、死亡、結婚の比率は、国を異にするにつれて極めて異るものであり、また同じ国でも、時期を異にし事情を異にすれば、極めて異るものであると信ずべき有力な理由があることは、前数章で吾々の見たところである。
 この種の変化がスイスに起ったことは、ほとんど確実であるように思われる。健康の増進から我国に同様の結
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