疑いもなく従来それによって養われていたものの間には最も錯雑した災厄が生ずるであろうが、しかし私は、社会の労働部分一般の境遇も、この国の人口も、これによって損害を蒙るとは、考えないのである。フランスにおける私生児の比率は、全出生の四七分の一から一一分の一へというような異常な増加を示したのであるから、より[#「より」に傍点]多くのものが養育院に遺棄され、またこれらのうち通例以上のものが死亡することは明かであるが、しかも、通例の数以上のものが家庭で育てられ、そしてかかる恐るべき収容所の死亡を免れ得たであろう。養育院の基金が乏しいことから見て、適当な保姆は傭うことが出来ず、多数の子供が絶対的飢餓で死亡したことと思われる。養育院のあるものはついに新たな収容を拒避したが、これは極めて当然なことである。
 報告は、全体として、フランスの国内状態に対して好ましい光景を示していない。しかし若干は疑いもなくこれら報告の性質に帰せらるべきものである。けだしこの報告は、各県の状態を説明した記述と、政府から援助または救済を得る目的をもつ特別の要求とから、成るものであるから、それがむしろ好ましくない方面の陳述に偏することは当然予期せらるべきことである。問題が新税の賦課や旧税の免除にある時には、人々は一般にその貧困を訴えるであろう。実際租税の問題については、フランス政府はいささか当惑しなければならぬように思われる。けだしそれは極めて適切にも、県会に勧奨して、漠然たる不平に耳を傾けることなく、特定の不平を述べて特定の救治策を提議し、特に他の租税を推奨することなくして一租税の廃止を要求することのないようにと云ったのであるが、しかし私には、すべての租税が非難されており、しかもこれに代るものを何ら提議することなくして一般的に非難されている場合が、最も多いように思われる。地租、動産税、入市税、関税は、すべてはげしい不平の種である。そして私の注目を惹いた唯一のこれに代る新税は狩猟税であるが、狩猟は現在フランスではほとんど消滅しているから、一切の残余を埋合すに足る収入を生ずるものとは期待し得ない。この著作は全体として極めて興味があり、そして各県の状態を知りその改善のためのあらゆる観察と提案とに耳を傾けようという政府の希望を示すものとして、統治者の大きな名誉に価するものである。それはしばらくの間は公刊されたが、しかしその配附はまもなく停止され、牧師や県会に限られることとなった。実際この記録は明かに、公的性質よりは私的性質を多くもっており、またたしかに一般配附を目的とする体裁をもっていないのである。
[#ここで字下げ終わり]
 スペインの人口の状態については、読者はよろしく、タウンスエンド氏の価値多く興味ある同国の旅行記を見られたい。読者はそこでしばしば人口原理が極めて面白く例証されているのを見るであろう。スペインは特別の一章を設けて論ずべきであったが、しかしそうすると本書のこの部分が余りに長くなる恐れがあり、多くの国から同じ性質の推論を引出す必要上ほとんど止むを得ず同じことを繰返すことになってしまう恐れがある。その上、タウンスエンド氏の見事な叙述にそれ以上加えることは私には出来そうもないのである(訳註)。
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〔訳註〕この一パラグラフは、第二―第四版ではすぐ前の註の中の最後の一パラグラフをなしていたが、第五版から本文となった。
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[#改ページ]

    第七章 フランスにおける人口に対する妨げについて(続)(訳註――本章は第五版に新たに設けられたものである。)

 共和制第九年分の各知事の報告、並びにその後一八一三年に政府が発表した若干の報告は、私が想像したよりも低い出生率を与えているが、それだからといって私は前章の推算や仮定を変更した方がよいとは思わない。それはけだし第一に、これらの報告は、結婚の奨励と出生率とが最大であったと思われる革命の初期を含んでおらず、また第二に、それはやはり、前章がその説明を目的とした主たる事実、すなわち革命中の死亡にもかかわらずフランス人口が減少しなかった――もっともこれは出生率の増加よりもむしろ死亡率の低減によって生じたものかもしれないが――という事実を、十分に確証するように思われるからである。
 共和制第九年の報告によれば、出生、死亡、結婚の総人口に対する比率は、次の通りである、――
[#ここから表]
出生/死亡/結婚
三三分の一/三八・五分の一/一五七分の一1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]
[#ここで表終わり]
[#ここから2字下げ]
 1)[#「1)」は縦中横] ジュネエヴのプレヴォ氏の手になる、本書仏訳第二巻八八頁の貴重な註を参照。プレヴォ氏は、第九年の出生、死亡、結婚の報告には脱
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