男子が著しく減少したという一般承認の事実によって、人々は当然に、人口は全体として減少したに違いない、と考えるに至るであろう。単に外見から判断しても、百人の成人に代えるに百人の子供をもってすることは、確かに、人口に関して同一の印象を与えないであろう。従って、第九年の人口実測が完了した時に、人口が全体として減少しなかったことがわかったとしても、私は少しも驚かないであろう。報告のあるものでは、『人民の間に拡がった一般的安易』及び『大土地所有の分割』が増加の原因であると述べられており、またほとんど全般に亙って、『早婚』及び『徴兵令を忌避するために増加した結婚』が特に指摘されている。
 農業状態に関しては、七八の報告のうち、六は進歩、一〇は退歩したと云い、七〇は一般に奨励を要すると云い、三二は『開拓の増加』を喞《かこ》ち、一二は『開拓の奨励』を要求している。報告の一つは、『最近莫大な土地が開墾され、農業に従事する者をもってしては処理し得ないほど仕事が殖《ふ》えた』と述べており、また他のものは、『久しい以前から行われる尨大な開拓』に論及しているが、これは最初のうちは成功と思われたが、まもなく耕作面積を減らして集約度を高める方が有利であることがわかったものである。報告の多くは穀物の低廉なことと、これに十分な売口のないことを指摘しており、そして『共有地』の分割に関する問題を論じては、『この分割は、これを開拓することによって、疑いもなく事実産物を増加したが、しかし他方において、放牧場は存在しなくなり、家畜はおそらく減少した。』と云っている。従って全体として私は、この国の農業は大きな純生産物を挙げるように適切な処理を受けたとは思われないけれども、総生産物は革命中に少しも減少しなかったのであり、そしてかくも多くの新地を開墾しようとする企図は労働者の不足を更にいっそうはなはだしからしめた、と推論したい。そしてもしこの国の食物が革命中に減少しなかったことが認められるならば、極めて広く指摘されている労働価格の騰貴は、社会の労働階級の間に極めて有力な人口増加の奨励として作用したに違いない。
 地租すなわち 〔contribution foncie`re〕 はあまねく不平の種となっている。実際それは極度の重税であり、その負担は非常に不公平であるように思われる。それは純生産物のわずか五分の一を徴収する意図のものであったが、しかし農業が一般に改良されておらず、小地主の数が多く、なかんずく投下資本に比して過大の土地を耕作しようと企てるので、それはしばしば四分の一、三分の一、はなはだしきは二分の一にすら達する。所有地が余りにも細分されて、農場で家族を養うためにはその地代と利潤とを合せなければならぬような場合には、地租は著しく耕作を阻害しなければならぬ、もっともしばしば英蘭《イングランド》で見られる如くに、農場が大きな場合には、この種の結果はほとんどまたは全く伴わないのであるが。報告に述べてある農業に対する阻害の中には、新相続法による土地の過度の細分が指摘されている。大きな所領の若干の分割はおそらく農業の改良に貢献したであろう。しかしここに述べたような性質の細分は確かに反対の結果をもたらし、ことになかんずく純生産物を減少する傾向をもち、地租をして苛酷でもあればまた不生産的でもあるものたらしめるであろう。もし英蘭《イングランド》の一切の土地が一年に二〇|磅《ポンド》をもたらす農場に分割されるならば、吾々はおそらく現在よりも人口が多くなるであろうが、しかし一国民としては極度に貧しくなり、そして現在と同一数の工業を維持することも同一の租税を徴収することも、全く不可能になるであろう。すべての県は、〔contribution foncie`re〕 の低減をもって、農業の繁栄にとり絶対に必要なものと要求している。
 養育院や慈善的施設の状態、乞食の流行や捨児の死亡率については、ほとんどあらゆる報告に最も歎かわしい光景が描かれており、このことから最初は吾々は、一切の下層階級のもの一般の間では貧困と窮乏の程度が増大したものと推論したくなる。しかしながら、養育院や慈善的施設は、革命の間、その収入のほとんど全部を失ったように思われる。そして外に頼るところのない多数のものからこのように突然生計の途を奪ったので、このことは、周知の都市における工業の失敗と、私生児の著しい増加と相俟って、報告に述べられているような一切の悲惨な外見を、周知の労働の価格騰貴と穀物の比較的低廉とから必然的に生ずる農業労働者一般の境遇の改善という大事実と衝突することなく、生ぜしめ得たのであり、そして一国の有効人口が主として供給されるのはこの農業部分からなのである。もし英蘭《イングランド》の貧民税が突然廃止されるならば、
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