「していながら、しかも彼は、なお、結婚数に留意するのが政府の主要義務の一つである、と考えている。彼はアウグストスとトラヤヌスの実例を引用し、そして王公や政治家が結婚比率を一対一二〇ないし一二五から、一対八〇ないし九〇の比率にまで高め得たら、これは彼をして真に国民の父たる名に価せしめるものであろう、と考えている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。しかし、彼自身が与えている事例から見て、久しい間かなり人口が稠密であった国においては、死亡こそが結婚に対する一切の奨励の中で最も有力なものであることが、明かにわかるのであるから、かくの如く結婚数を著しく増加する上で成功を収めた王公や政治家は、おそらく、国民の父たるよりは、その破壊者たる名にふさわしいのである。
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1)[#「1)」は縦中横] 〔Sussmilch, Go:ttliche Ordnung, vol. i. c. iv. sect. lxxviii. p. 151.
[#ここで字下げ終わり]
年出生の総人口に対する比率は、明かに主として、年々結婚する人間の比率に依存しなければならず、従って大きな人口増加を許さぬ国においては、結婚と同様に、主として死亡に依存しなければならぬ。実際の人口減少が起っていない場合には、出生は常に、死亡によって作られる間隙を充たし、そしてちょうど国の資源の増加が許すだけこれを超過するであろう。ヨオロッパのほとんどあらゆる地方において、時々これを襲った大|疫病《ペスト》や伝染病や戦争の中間期中には、出生が死亡を超過している。しかし死亡率は国と環境を異にするにつれはなはだしく異っているから、出生も同様に異ることが見られるであろう。ただしたいていの国が許し得るところの、死亡以上に出ずる出生の超過の如何《いかん》によって、それが異る程度は同一でなかろうが。
死亡率が約二三分の一であるオランダの三九箇村においては、出生もまた約二三分の一である1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。パリ周辺の一五箇村では、出生は総人口に対し同一の比率にあり、または死亡率がいっそう高いのでもう少し高く、出生は二二・七分の一、死亡も同一である2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。人口が増加しつつあるブランデンブルグの小都市では、死亡率は二九分の一出生は二四[#式(fig45455_01.pn
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