ろう。
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1)[#「1)」は縦中横] Lettres Edif. tom. vi. p. 360.
2)[#「2)」は縦中横] Charlevoix, No. Fr. tom. iii. p. 376.
3)[#「3)」は縦中横] Robertson, b. iv. p. 155. Lettres Edif. tom. vi. p. 182, 360.
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かかる戦法は明かに、蒙昧生活の困難と危険の下において若い人間を育てるのに伴う困難を意識するから生じたものである。そして強大な破壊原因は、ある場合には、人口を生活資料よりもはるかに低く保っておくほどに大であろう。しかしアメリカ土人がその社会の縮少を恐れる様を現わし、またそれを拡大せんとする明かな希望を現わすということは、一般に事実もその通りであるということの証拠ではない。各々の社会で相食い合うようなその国はおそらく増加人口を養い得ず、一種族の力の増加は、それに対し、比較的弱くなったその敵から新しい生活資料の源泉を新しく奪う途を与える。そして反対に、その成員の減少は、残った成員に対し前よりも豊富に食物を与えるどころか、かえってより[#「より」に傍点]強い種族の侵略による絶滅や飢饉を蒙らしめることとなるのである。
本来は単にグアラニイ族の一小部分に過ぎなかったシリグアンヌ族は、彼らのパラグアイの故国を去って、ペルウに近い山中に定着した。彼らはこの新しい国で十分な生活資料を見出し、急速に増加し、近隣を攻撃し、そして優れた勇気と優れた財産とによって次第にこれを絶滅し、その土地を奪った。広大な土地を占領し、そして数年にして三四千人から三万人に増加したが1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、近隣のより[#「より」に傍点]弱い種族は日に日に飢饉と剣とによって減少して行った。』
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1)[#「1)」は縦中横] Lettres Edif. tom. viii. p. 243.『シリグアンヌ族は恐ろしく増加し、わずか数年にしてその数は三万に上った。』
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かかる事例は、アメリカ土人ですら、好都合の事情の下においては急速に増加するものであることを証明し、またあらゆる種族がその成員の減少を恐れ、そして現実に所有する領土内の食物の豊富を仮定せずしてしばしばその成員の増加を希望することを1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、十分に説明するものである。
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1)[#「1)」は縦中横] Lafitau, tom. ii. p. 163.
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上述の、アメリカ土人の人口に影響を及ぼす諸原因は1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、主として生活資料の多少により左右されるものであることは、湖水や川に近いか、土地の肥沃度が優れているか、または改良がより[#「より」に傍点]進んでいるので、食物がより[#「より」に傍点]豊富になっている一切の地方において、土人の種族がより[#「より」に傍点]多く、またその各種族の成員の数も多いという事実によって、十分に証明される。オリノコ河に接する地方の奥地では、どちらへ数百|哩《マイル》行っても、一軒の小屋もなく、一匹の動物の足跡も見られない。気候がより[#「より」に傍点]厳しく、土地がより[#「より」に傍点]瘠せている、北アメリカのある地方では、荒廃は更にいっそう甚しい。数百リイグ四方の広大な土地を通っても、無住の平原と森林とがあるだけである2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。宣教師は十二日間ただの一人にも出会うことなく旅をしたと云い3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]、また非常に広大な土地にわずか三、四の散在する部落が見られただけであるとも云っている4)[#「4)」は縦中横、行右小書き]。かかる荒野のある所は鳥獣を全然産せず5)[#「5)」は縦中横、行右小書き]、従って全く人影がない。ある程度鳥獣のいる他の場所では、狩猟期になると猟の部隊がやって来、獲物の有るに従って各地に天幕を張って止り、従って文字通りそこで産する生活資料の量に比例して人が住むことになるのである6)[#「6)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] これらの原因は、おそらく、人口を生活資料の水準に抑止して余りあるように、思われるであろう。そしてそれは実際、インディアンの女子の出産性の小なることの報道が、普遍的に、または大体にでも、本当であるならば、その通りであろう。おそらくある記述は誇張であろうが、どれがそうかは云いにくい。そしてこれら一切の誇張を斟酌しても、それは右の点を確立するに十分足るものであることが、認められなければならない。
2)[#「2)」は縦中横] Robertson, b. iv. p. 129, 130.
3)[#「3)」は縦中横] Lettres Edif. tom. vi. p. 357.
4)[#「4)」は縦中横] Id. p. 321.
5)[#「5)」は縦中横] Id. tom. ix. p. 145.
6)[#「6)」は縦中横] Id. tom. vi. p. 66, 81, 345; tom. ix. p. 145.
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アメリカの他の地方は人口が比較的稠密であると云われている。例えば北部大湖水に接した地方、ミシシッピイ河の両岸、ルイジアナ、及び南アメリカの諸地方がこれである。この地方では、その地が鳥獣や魚を産する多少や、住民の農業上の進歩に比例して、村は大きく、またそれは互に接近している1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。メキシコ及びペルウという人口稠密の大帝国のインディアンは、疑いもなく、もっと野蛮な彼らの同胞と同じ祖先から発し、そして本来は同じ習慣を有っていたに違いない。しかし一連の諸事情により、彼らがその農業を改良し拡張するに至った時から、男子の冷淡や女子の破壊的習慣にもかかわらず、大きな人口が急速に伴生したのである。かかる習慣は実際境遇の変化に従って大いに変化した。そして不断の流浪と困難との生活に代ったより[#「より」に傍点]静かな定住的生活は、直ちに女子をより[#「より」に傍点]多産的ならしめ、そして同時に彼らをしてより[#「より」に傍点]大きな家族を世話し得せしめるに至るであろう。
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1)[#「1)」は縦中横] Id. tom. ix. p. 90, 142. Robertson, b. iv. p. 141.
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歴史家が述べているアメリカ大陸を概観すると、人口は、各地の住民が、その現実の勤労と進歩との状態において、獲得し得る食物量と、ほとんど全く比例して、地上に拡っているように思われる。そしてほとんど例外なく、人口は、その限界に及ばないよりはこれを緊密に圧迫していることは、アメリカのあらゆる地方において食物の欠乏から窮乏が頻々と起ることで、わかるのである。
ロバトスン博士によれば、野蛮な民族が飢饉により蒙る悲惨な状態の顕著な事例が起っている。その一つとして、彼は、フロリダの蒙昧人の間でほとんど九年も住んだスペインの探検家の一人、アルヴァル・ヌウニェス・カベサ・デ・ヴァカの書いている記述を述べている。彼は、この蒙昧人は、あらゆる種類の農業を知らず、主として各種の植物の根を食べて生きているが、これを得るのは非常に困難であり、それをたずねてあちらこちらとさまよう、と云っている。時には彼らは鳥獣を殺し、時には魚を取るが、その量は極めて少く、従って彼らは、飢餓の余り、蜘蛛、蟻の卵、芋虫、とかげ、蛇、及び一種の滑土を喰うの止むなきに至る。そこで――と彼は云う――この国に石があったなら、彼らはこれを呑んだことだろうと思う、と。彼らは魚や蛇の骨を貯えておき、これを粉にして食べる。彼らがそれほど飢餓に悩まないのは、オプンチアすなわちさぼてんの実が熟する季節だけである。しかし彼らはこれを探すためには、時にその通常の居住地から遠くまで旅行しなければならない。他の場所で、彼は、土人はしばしば食物なしに二、三日を過さざるを得ない窮状にある、と述べている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Robertson, note 28 to p. 117, b. iv.
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エリスは、そのハドソン湾航海記において、その近隣のインディアンが極度の欠乏に悩んでいる有様を、悲痛な語調で述べている。気候の厳しいことを述べた後、彼は曰く、『厳しい寒さから生ずるこれらの困難が大であるとはいえ、それは食糧の不足とそれを獲得する困難よりははるかに劣る、と正当に云い得よう。工場で話されておりかつ本当のことだと知られている一つの物語は、十分にこのことを証明し、そして憐み深い読者にこれらの不幸な人が曝されている窮状を正しく察せしめるであろう。』それから彼は、一人の貧しいインディアンとその妻のことを述べているが、彼らは狩猟がうまくいかないため、衣服として着ていたすべての皮を食った後、その子供の二人の肉を食ってしまうという恐るべき行為に追いつめられたのである1)[#「1)」は縦中横、行右小書き、「1」が底本では欠落]。他の場所では彼は曰く、『夏に、取引に工場へやって来たインディアンは、期待していた後援が来ないので、数千枚の海狸の皮の毛を焼き取らざるをえないことが、時々あった2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。』
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1)[#「1)」は縦中横] Robertson, p. 196
2)[#「2)」は縦中横] P. 194.
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蒙昧生活と文明生活との比較において絶えず最も矛盾した推理を行っているレイナル僧正は、ある場所で、蒙昧人は間違いなく適当な生活資料を得ていると云いながら、しかもカナダの民族について記しているところでは、彼らは鳥獣や魚の豊富な国に住むにもかかわらず、ある季節には、また時には一年中、この資源を得られないと述べ、かくて生ずる飢饉は、余りに相互に離れ合っているので助け合うことの出来ないこれら人民の間に、大きな破滅をもたらす、と云っている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Raynal, Histoire des Indes, tom. viii. l. xv. p. 22.
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シャルルボワは宣教師が蒙る不便と窮状とを述べているが、その中で、彼がこれまで述べた害悪よりももっと大きな害悪が一再ならず起るが、それに比べれば一切の他のものは何でもないと云わねばならぬ、と云っている。これは飢饉である。なるほど――と彼は云う――蒙昧人がその飢餓に堪える忍耐力は、飢餓に対する不用意と匹敵するが、しかし彼らは時にその維持能力以上のひどい目にあうのである1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Hist. N. Fr. tom. iii. p. 338.
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アメリカ土人の大部分では、農業上若干進歩しているものでさえ、一年のある季節には森林の中に散らばり、一年の食料の主要部分として狩猟の獲物で数ヵ月暮すのが、一般の習慣である1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。その部落に残っていれば彼らは確実に飢饉に会わなければならぬが2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]、森林へ行ったからとて、必ずしもそれから確実に免れるとはきまっていない。鳥獣に不足のないところですら、最も優れた猟人でさえ時に獲物の得られぬことがある3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。しかもこの獲物のないときには、狩猟者や旅行者は、森林の中で最も惨酷な欠乏に曝されるのである4)
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