瞭かつ不規則ではあるが、存在することは、この問題を深く考察する思慮ある人のよく疑い得るところではないのである。
この擺動が、当然予想されるほどは今まで述べられておらず、またそれほどはっきりは経験によって確かめられていない、一つの主要な理由は、吾々が所有する人類の歴史が一般に単に上流階級のみの歴史であるからである。吾々は、人類のうちでかかる後退前進の運動が主として起る部分の行状と習慣とについて、当てになる記述はたくさん有っていない。一つの民族、一つの時代につき、この種の満足な歴史をつくるためには、多数の注意深い観察者が、不断の細心の注意をもって、社会の下層階級の状態とそれに影響を及ぼした原因とに関する、地方的なまた一般的な記述を行うことが必要であろう。そしてこの問題に関して正確な推論をひき出すためには、かかる歴史家が数世紀に亙《わた》って続いて出ることが必要であろう。この方面の統計的知識は、近年、ある国々において取扱われている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。そして吾々は、かかる研究の進歩から人類社会の内部構造をもっとはっきり知り得るに至ることを期待し得よう。しかしこの科学はなおその幼年期にあり、そしてそれに関する知識を得ることが望ましい諸題目の多くは、取扱われていないかまたは十分正確に述べてないかである。かかるものとして数え得るものとしては、結婚数に対する成年数の比例、結婚の抑制の結果として悪習が普及している程度、社会の最も困窮している部分の子供ともっと楽に暮している者の子供との死亡率の比較、真実労働価格の変動、一定の期間の異る時期における、安易と幸福とに関しての、社会の下層階級の境遇の、眼に見える相違、及びこの問題において最も重要なものたる出生、死亡、及び結婚の非常に正確な記録である。
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1)[#「1)」は縦中横] サア・ジョン・シンクレイアが蘇格蘭《スコットランド》で配附した適切な質問と、彼がこの地方で集めた貴重な報告とは、彼に最高の名誉を与えるものであり、そしてこれらの報告は、永久に、この蘇格蘭《スコットランド》僧侶の学識、良智、教養の偉大な金字塔として残るであろう。隣接諸教区がこれと一緒になっていないのは遺憾なことであるが、もし一緒になっていたら、特定教区の状態を理解する上にも想起する上にも記憶に役立ったことであろう。この中に
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