にもかかわらず、生活資料以上に増加せんとする人口の不断の努力のない国はほとんどない。この不断の努力は、同じく不断に、社会の下層階級を困窮に陥らしめ、その境遇の何らかの永久的大改善を妨げる傾向があるのである(訳註)。
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〔訳註〕これに該当する文が第一版にあることは、この前四つ目の訳註を参照。
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かかる結果は(訳註)、社会の現状においては、次の如くして生み出されるように思われる。吾々はある国の生活資料が、その住民を容易に養うにちょうど等しいものと、仮定しよう。最も罪悪の多い社会ですら作用していることが見られる人口増加へ向かっての不断の努力は、生活資料が増加しないうちに人口を増加せしめる。従って、以前には一千百万を養った食物は今度は一千百五十万に分たれなければならぬ。貧民の生活はその結果としていっそう悪くならなければならず、そしてその多くは極貧に陥らなければならぬ。労働者の数もまた市場における仕事の比例以上になるので、労働の価格は下落する傾向がなければならず、他方食物の価格は同時に騰貴するであろう。従って労働者は、前に稼いだと同じだけを稼ぐために、より[#「より」に傍点]多くの仕事をしなければならぬ。この困窮期には、結婚の阻害と一家を養う困難とは極めて大となり、ために人口の増進は遅延させられるであろう。しかるに、労働の低廉と労働者の豊富と彼らが勤労を増加しなければならぬ必要とは、耕作者を奨励して、新地を開き既耕地をより[#「より」に傍点]完全に施肥し改良するために、より[#「より」に傍点]多くの労働をその土地に投ぜしめ、かくて遂に生活資料は人口に対して、出発点の時期と同じ比例となるであろう。労働者の境遇はこの時にはまたもかなりよくなり、人口に対する抑制はある程度緩められる。そして、短期間の後に、幸福に関しての同じ後退前進の運動が繰返されるのである。
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〔訳註〕本章のこれ以下の部分については、cf. 1st ed., ch. II., pp. 29 et seq.
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この種の擺動はおそらく普通の人にははっきりと見えないであろう。そして最も注意深い観察者にとってすら、その時期を計ることは困難であろう。しかし、古国の大部分では、この種のある交替運動が、私がここに述べたよりは遥かに不明
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