にあるものは、総人口に対し、他のたいていのヨオロッパ諸国よりも大きな比率を示す。従ってノルウェイの実際の結婚率は、他の諸国のそれに比較して、予防的妨げの作用している全範囲を表わしはしないであろう。(訳註――この註における文章の部分、すなわち『年結婚の』以下は、すべて第四版より現わる。)
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結婚数がかくの如く少ない原因の一つは、最近数年前まで行われていた兵士徴募方法である。デンマアク及びノルウェイでは、農民または労働者に生れた一切の男子は兵士となる1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。以前には地区司令官はかかる農民を年齢を問わず望むがままに徴集することが出来た。そして彼は一般に、二十五歳以下のものより二十五歳ないし三十歳のものを選んだのである。軍務にとられた後は、男子は、妻と家族とを養うに足る資のあることを証明した、教区牧師の署名のある、証明書を提出しなければ、結婚することが出来ず、またその場合でも、その上に士官の許可を得ることが必要であった。この証明書と許可を得るのが困難であり、また時には費用がかかるので、非常に境遇のよいわけはないものは、十年という服務期が切れるまで、一般に結婚のことを考えるのを思い止《とどま》ったのである。そして三十六歳以下のものは何歳であろうとも兵役に入れることが出来、また士官はとかく最年長者を第一にとるので、人々が自由に身を固め得ると考え得るようになるのはしばしば晩年のことであったであろう。
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1)[#「1)」は縦中横] ノルウェイに関して私が述べる若干の詳細は、私が一七九九年同国に夏期旅行を試みた際に蒐集したものである。
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教区牧師は軍役にないものが結婚するのを妨げる法的権力はもたなかったけれども、しかもこの種の裁断権はある程度習慣によって認められ、そして僧侶はしばしば、当事者が家族を養う資力がなさそうに思われる時には、彼らが結婚するのを拒絶したのである。
しかしながら、この種のあらゆる障害は、法律に発するものであろうと習慣に発するものであろうと、今では全然除かれてしまった。何歳であろうと結婚は全く自由であり、司令官の認可も僧侶の認可もいらない。そして兵役徴集においてはすべての二十歳のものをまずとり、次いですべての二十二歳のものをとる、という風に必要な数が得られるまでこのようにして行われるのである。
士官は一般にこの改正に不賛成である。彼らは、ノルウェイの青年は、二十歳では、体力も十分に発達せず、立派な兵士となることは出来ない、と云っている。そして多くの人は、農民は今や早婚に奔《はし》り過ぎ、またこの国が養い得る以上の子供が生れるであろう、と云っている。
しかし、兵役編入に関するあらゆる規定を別としても、ノルウェイの特殊事情は、早婚に対する非常に強い障害をなすものである。国内の過剰人口を吸収すべき大工業都市はなく、また各村落も当然に自ら需要以上の人手を供給するから、仕事を求めて場所をかえてみても滅多に成功しそうもない。従って外国移民の機会がない限り、ノルウェイの農民は一般に生れた村に留っている。そして、死亡率が低いので家屋と職業のあきはなかなかに出来ないから、農民はしばしば、家族を養い得る地位を獲得し得るまでには、長期間待つのを余儀なくされるであろう。
一般にノルウェイの農場には、その大きさに比例して一定の数の既婚労働者が用いられており、それは家人《ハウスマン》と呼ばれている。彼らは農業者から、家屋と、ほぼ一家を支えるに足る土地を受け、これに対して、何時《なんどき》なりとも要求された場合に安い一定の価格で働らく義務を負うている。都市のすぐ近くと海岸地方とを除けば、この種の地位の空くのが、家族を養う唯一の機会である。人口が少なく、仕事の種類が少ないので、この問題は誰の眼にもはっきりとわかる。従って彼は、かかる空席が生ずるまでは、結婚の志向を抑えるの絶対に必要なることを感ぜざるを得ない。材料が十分にあるので自分の家を建てたいと思っても、農業者が既に十分な労働者を持っている場合には、農業者がそれに適当な土地を与えようとは期待し得ない。そして彼は夏の三、四箇月の間は一般に仕事を見出すことが出来ようが、丸一年間家族を養うほどの稼ぎをする機会はほとんどなかろう。おそらく教区牧師が結婚拒絶権を行使したのは、彼らが待ち切れないで自ら家を建て、または建てようと企て、そして彼らの稼ぎを当てにするという場合であろう。
従って、若い男女は、家人《ハウスマン》の地位が空くまでは、未婚の使用人として農業者の許に止まらざるを得ない。しかもこれら未婚の使用人は、あらゆる農場やあらゆる紳士の家庭で仕事に必要なよりも遥かに大きな比例をなしている。ノル
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