#「2)」は縦中横、行右小書き]。
[#ここから2字下げ]
1)[#「1)」は縦中横] Id. p. 191.
2)[#「2)」は縦中横] カンツレエルは、有効に播種[#「有効に播種」に傍点]された土地からの収穫も、一粒当り三粒に過ぎぬ、と云っている。Ch. vi. p. 196.(訳註――この註は第六版のみに現れる。)
[#ここで字下げ終わり]
この国の西側の旅行中に、またその後ノルウェイからストックホルムまでこの国を横断し、そこから東海岸を上ってフィンランドに渡るところへ行く間で、私は予期すべきほどには国民の勤労が不足している徴標を見なかったと告白せざるを得ない。私の判断し得た限りでは、英蘭《イングランド》だったら開墾されるだろうと思われる土地で開墾されていないのはほとんど見受けず、そして英蘭《イングランド》では犁《すき》が触れたことがないような土地が、数多く耕やされているのを、確かに見た。それは五|碼《ヤード》[#「碼」は底本では「※[#「口+馬」、第3水準1−15−14]」]ないし十|碼《ヤード》[#「碼」は底本では「※[#「口+馬」、第3水準1−15−14]」]ごとに大きな石や岩があり、犁を使う時にはそれを迂廻するかその上を持上げて越さなければならぬ土地であり、そのいずれかが岩石の大きさに応じて一般に行われている。犁は非常に軽くて一頭の馬が索《ひ》き、木の株の間を耕す際には、それが低ければ、一般にはその上を持上げて越すのである。犁を持つ男はこれを極めて素早くやり、ほとんどまたはは全く馬を止めないでするのである。
現在広大な森林で蔽《おお》われている土地を耕作するの価値については、私は何とも判断することが出来ない。しかし、スウェーデン人もノルウェイ人も、余りに軽率に、開拓した場合土地の真の価値がどうなるであろうかをあらかじめ考慮することなく、森林を開拓する、と非難されている。その結果として、焼木の灰から得られる肥料により常にライ麦が一作だけ良い作が得られるというので、それだけのために多くの若木が時に台なしになり、そして土地はその後にはおそらくほとんど全く役に立たなくなってしまう、ということになるのである。ライ麦の収穫後は、たまたま成長する草で家畜を飼うのが通例である。土地が本来良質の場合には、家畜の飼育は新らしい樅の成長を防止するが、しかしそれが瘠《や》せている場合には、家畜はもちろん永い間そこに止まることが出来ず、従って風が吹くたびに種子が運ばれて土地は再び樅が密生することとなるのである。
ノルウェイ及びスウェーデンにおけるこの種の多くの土地を観察して、私は、――これは他の理由からするとほとんど不可能な想像なのであるが――かかる外見からすると、これらの国が現在よりも過去の方が人口が多かったかもしれず、また現在森林で蔽われている土地も一千年以前には穀物を生産したかもしれぬ、と想像してもよかろうという感想に、打たれざるを得なかった。戦争や疫病《ペスト》やまたそのいずれよりも有力な人口滅殺者たる暴政が、突如として住民の最大部分を破壊しまたは追放したかもしれぬ。そしてノルウェイまたはスウェーデンで二、三十年間も土地を放置しておけば、国の外見にははなはだ奇異な変化が生ずることであろう。しかしこれはただ私が云わないでいられない一つの感想にすぎず、これは私をしてこの事実を少しでも信ぜしめるほどの力のあるものではないことは、読者の既に知られるところである。
スウェーデンの農業に戻ろう。国民の勤労が足りないかどうかを別問題として、この国の政治制度には、その耕作の自然的進歩を阻害するある事情が確かにある。今日なお若干の煩わしい賦役制度が残存しており、これは一定の土地の所有者が王領のために負担させられるものである1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。この国の駅逓は確かに安価で旅行者に便利であるが、しかしその実施のためには農業者は人間の点でも大きな労働の浪費をしなければならぬ。スウェーデンの経済学者の計算によれば、この制度の廃止によって浮く労働だけで、年三〇〇、〇〇〇タンの穀物が生産されるであろうという2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。スウェーデンでは市場が非常に遠く、またそのほとんど必然的な結果として、分業が非常に不完全であるためにも、時間と労力の大きな浪費が生ずる。そしてスウェーデンの農民の間に勤労と活動との著しい不足は何もないとしても、最上の輪作法や土地を施肥し改良する最良の方法についての知識の不足は、確かにあるのである3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。
[#ここから2字下げ]
1)[#「1)」は縦中横] 〔Me'moires du Royaume de Sue`de, ch. vi. p. 202.〕
前へ
次へ
全109ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
マルサス トマス・ロバート の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング