年平均と同一でなければならず、従って年出生は年結婚に対して三対一である。通常の計算方法によれば、この事実から、各一結婚当り子供六人という仮定から出発したにもかかわらず、各一結婚は子供三人を産むものと推論されることになる。この矛盾は、本章の前の方で述べた推理を力強く確証するものであり、また年出生の年結婚に対する比率は各一結婚当りの子供の数を表わすものではなく、これとは全く別物の、結婚まで生存する産児の数を表わすものであることを、示すものである。
『もし今の場合の如くに三分の二ではなく、わずか産児の半数が結婚まで生存する――この方がもっと普通の比率であるが――ものと仮定すれば、第二期には、出生を表わす第三欄に九、結婚者を表わす第五欄に四・二分の一という数字を得る。従って結婚は出生に対して一対四となるが、これはヨオロッパの最も通常の平均である。もっとも今の場合には、吾々は依然各一結婚はその持続期間中に六人の子供を産むものと仮定している。同じ仮定によれば、出生は死亡に対し九対四・二分の一プラス二、すなわち一八対一三、すなわち約一三・五分の四対一〇であろう。従って、出生が死亡に対して一三・五分の四対一〇すなわち一三八対一〇〇であり、また産児の半数が結婚まで生存する場合には、各一結婚は出生六を産まなければならぬと推論し得よう。
『もし吾々が、一結婚当りの出生は五であり、産児の半数が結婚まで生存すると仮定すれば、表によれば、出生は死亡に対して約一三・五分の一対一〇であり、従って吾々は、同様に、出生が死亡に対し一二・五分の一対一〇であり、また産児の半数が結婚まで生存する場合には、各一結婚は五人の子供を産まなければならぬ、と推論し得よう。
『かかる原則によれば、もしある国で出生の死亡に対する比率と出生の結婚に対する比率とを得ることが出来るならば、吾々は各一結婚当りの産児数にかなり近いものを計算することが出来よう1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。この数字は実際、旧式の計算方法の結果とは非常に異るものとなるであろう。しかしこの事情はむしろそれが正しいことを示すものである。けだし人口に関する既知の事実は、ヨオロッパの一般平均として四以下を与えるところの一結婚当りの出生数の通常の測定方法によっては、おそらく説明し得ないからである。
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『1)[#「1)」は縦中横] 換言すれば、表の構成に、またはそれから下し得ると思われる推論に、不正確が何もないと仮定して。今のところでは私は不正確はないと思う。
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『ビュフォンはその著作に若干の死亡表を挿入しているが、これは彼のつもりでは全人類に当てはめ得るものと考えらるべきものである1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。もし吾々が、一結婚当り子供四人という平均を、ビュフォンの死亡率推定に当てはめるならば、ヨオロッパの人口は、有力な増加傾向を有つことなく、数年にして絶滅するの危険に瀕している、と思われるであろう。それは、幾何級数において増加してはおらず、幾何級数において減少していることになろう。もし、各一結婚につき認められた四人の子供のうち二人が八歳一箇月以下で死亡するものとすれば、吾々が期待し得る極点は、新婚一を得るためには一人半が生残しなければならぬということ、または現在の結婚四は次代の結婚三を生じなければならぬということ、これである。これは久しからずしてヨオロッパの人口を皆無ならしめる減少率である。
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『1)[#「1)」は縦中横] Histoire Naturelle de l'Homme, tom. iv. p. 420. 12mo. 1752.
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『しかし本当のことは、双方の計算が誤っているのである。ビュフォンの表は、パリとその周辺の村落の記録簿から得られたものであり、一般に適用し得るものとは決して考え得ないものである。他の誤りの源泉は、本章でこれまで指摘してきたものである。
『産児の半数が八、九歳以下で死亡するのは、特殊な境遇におかれている不健康な都市や村に限られる。ヨオロッパ中の平均をとれば、啻に産児の半数以上が青春期以上まで生存するのみならず、更に各一結婚は遥かに四以上、思うに五以上の出生を産むことを、私はほとんど疑わない。人口を妨げる貧困は、出生数を減少するよりも有力に死亡数を増加する傾向のあるものである。
『年出生と年結婚の表から結婚まで生存する産児の比率に関して断定を下すことは、右に打樹てた原則に従ってそれが有用たり得る唯一の観点なのであるが、このことをなすに当っては、特別の注意を払わなければ大きな誤りに導く虞れのある一つの事情がある。
『移民が出ている地方教区においては、結婚まで生存する比率は過小に与えら
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