に、いかなる人口増加も不可能である、ということになる。かくて、もし右の推理が承認され、年々結婚する者の年々生れる子供の数に対する比率が結婚まで生存する産児の比率を本当に表わすことが認められるならば、同時にまた、これらの表を作ったものが仮定しているように、それらは各個の結婚が産む出生数を表わすものと仮定すれば、かかる表が全部、人口の停止的なることを証明していることは、明かである。しかるに他の報告によって、急速な増加が進行中であることが、確実に知られている。かくて、スウェーデンにおいて、もし吾々が、一対四・一という年結婚の年出生に対する比率が、四・一の出生のうち一組が結婚まで生存することを表わすものと――これは事実そうなのだが――認め、かつ同時に、ワルゲンティン、ジュウスミルヒ、クロオメ、プライス、その他に従って、各一結婚はその存続期間中にわずかに四・一の出生を齎らすに過ぎぬと仮定すれば、四・一の出生のうち二・一が嬰児期、独身期に死亡し、わずかに各結婚当り二人の子供が新婚まで生存する、ということになり、この場合には何らの増加も不可能なのであるが、しかし死亡[#「死亡」は底本では「出亡」]以上に出ずる出生の超過から見ると、また現実の人口実測から見てさえ、人口増加が著しいことが完全に確かめ得るであろう。
『プライス博士はこの問題を考察した結果、人口の増減が生じつつある国においては、表は各一結婚当りの出生数を正確には表わさないことに気が附いた。しかし彼が、この点に関する正しい結論と私の考えるところに決して到達していないことは、彼が、産児の半数が結婚まで生存すると仮定すれば、もし結婚の出産性が増大するとすれば、出生は結婚の四倍以上に上るであろう、と述べているところからわかる1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。しかるに実際は、正確に産児の半数が結婚まで生存する限り、結婚の出産性がどれだけ変動しようとも、年出生は常に正確に年結婚の四倍であろう2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。
[#ここから3字下げ]
『1)[#「1)」は縦中横] Observations on Revers. Paym. vol. i. p. 270, note.
『2)[#「2)」は縦中横] 換言すれば、出生をして結婚に影響を及ぼさしめるに足る時が経過したときには。
『なるほどこの時期以前には、プライスの述べるところは正しいであろう。しかし実際上は、一国の婦人が突然通常以上に多産的になるということは滅多にない。そしてこの演繹の原本たる一般死亡表では、出生が結婚に影響を及ぼすようになっていないならば、それはいかなる種類の正しい平均をも表わし得ず、従ってあらゆる見地においてほとんど全く無用であろう、
[#ここから2字下げ]
『プライス博士がこの問題を理解していないその上の証拠には、彼はこれにつき長い念入りの註釈を加えているけれども、しばしば年出生と結婚の表をもって各一結婚当りの産児数を表わすものとしており、特に、スウェーデンの比率をもって該国の結婚の出産性の程度を示すものと指摘している1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。彼は単に、年出生と結婚の表は、あらゆる場合において、結婚の出産性を正確に表わすものでないと考えたに止り、それがこれと絶対的に何の関係もなく、また、単に不正確であるどころか、他の知識なくただかかる表からだけでは、ある国の結婚の出産性がその持続期間中に出生二を生ずる如きものであるか、または出生一〇〇を生ずる如きものであるかは、決して云い得ないものであることに、少しも気附いていないように思われる。
[#ここから3字下げ]
『1)[#「1)」は縦中横] Observations on Revers. Paym. vol. i. p. 275.
[#ここから2字下げ]
『従ってかかる表は、結婚の出産性の表わすものと考えれば、全く無用のものとして排斥されなければならぬが、しかし結婚まで生存する産児の比率を表わすものと考えれば、極めて貴重なものであり、極めて興味ありかつ望ましい知識を与えるものとして保存されなければならない。
『先女帝カザリンは、ロシアの新法典に関する告示の中で曰く、「我が農民は、大部分、一結婚から十二人、十五人、はなはだしきは二十人の子供を挙げている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。」これは確かに誇張であるが、しかしおそらく、この言葉は、ロシアの婦人は一般に多産的であるという知識に基づくものであろう。しかも作られた表によると、たいていの州では、わずか三人の子供しか産まぬことがわかるが、これは女帝の言葉とは全く両立し得ないものである。しかし以上の推理によれば、これらの表は単に、三人の産児のうち二人が結婚まで生存することを表わすだけのことで
前へ
次へ
全109ページ中85ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
マルサス トマス・ロバート の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング