焉A出生の死亡に対する比率に対しては同一の影響を及ぼすけれども、しかし結婚の出生に対する比率に及ぼす影響はその方向が反対であろう。結婚の出産性が大であれば大であるほど、出生の結婚に対する比率は大となり、結婚まで生存する産児の数が大であれば大であるほど、出生の結婚に対する比率は小となるであろう1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。従って、もし一定の限度内で、結婚の出産性と結婚まで生存する産児の数とが同時に増加するならば、記録簿における出生の結婚に対する比率は前と少しも変らないこともあろう。そしてこれあるが故に、各国の記録簿は、増加率が極めて異るにもかかわらず、しばしば出生と結婚に関しては同一の結果を示すのである。
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1)[#「1)」は縦中横] プライス博士は自らこの点を力説していながら(vol. i. p. 270. 4th edit.)、しかも健康性と多産性とはおそらくほとんど不可分の増加原因であると云い(p. 275.)、その証拠として出生及び結婚の記録簿を引証している。しかし、これらの原因は疑いもなく並存することもあろうが、しかしもしプライス博士の推理が正しいとするならば、かかる並存はおそらく出生及び結婚の表からは推論され得ないのである。実際、彼が結婚の出産性を証示するものとして記録簿を引証しているスウェーデンとフランスとの二国は、決して著しく健康ではないことは、人の知るところである。そして彼が言及している都市の記録簿は、彼れの所期の如く、出産性の欠乏を示しはしようが、しかも彼れの前の推理によれば、同時に健康性の大なることを示すものであり、従って両者の存在しないことの証拠として持ち出さるべきものではない。プライス博士が確証しようとする一般的事実、すなわち地方の境遇は都市よりも健康的でもあれば多産的でもあるという事実は、なお依然として事実であろう。しかしこの事実は確かに単に出生と結婚の表からは推論し得ないものである。ヨオロッパ諸国に関しては、最も出産性の低いものが最も健康性が高く、最も健康性の低いものが最も出産性が高いことが、一般に見出されるであろう。不健康な国で結婚年齢のより[#「より」に傍点]若いことが、この事実の明瞭な理由である。
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出生の結婚に対する比率は、実際、増加率を断定すべき何の基準をもなすものではない。一国の人口は五対一の比率の場合にも停止的のことも減少していることもあろうし、また四対一の比率の場合にもある速度で増加していることもあろう。しかし増加率が与えられるならば、それが他の源泉から得られたものであっても、出生の結婚に対する比率は記録簿の上で大きいよりも小さい方が明かに望ましいのであるが、けだしこの比率が小であれば小であるほど、結婚まで生存する産児の比率は大でなければならず、また云うまでもなくその国はそれだけ健康的でなければならぬからである。
クロオメは1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、一国の結婚が四以下の出生を生ずるときには、人口が極めて危殆《きたい》な状態にある、と云い、そして結婚の出産性を年出生の結婚に対する比率によって測定している。もしこの説が正しいならば、ヨオロッパの多くの国では、記録簿における出生の結婚に対する比率は四対一以上であるよりはむしろ以下であるから、多くの国の人口は危殆な状態にあることになる。この比率をして結婚の出産性の正しい表現たらしめるためには、記録簿上のこの比率をいかに修正しなければならぬかは、既に述べたところである。そしてもし産児の多数が結婚まで生存し、また結婚年齢が平均寿命よりも著しく若いとするならば、記録簿におけるかかる比率は決して急速な増加と矛盾するものではない。ロシアでは、出生の結婚に対する比率は四対一以下であることがわかっているが、しかもその人口は他のヨオロッパのいかなる国民よりも急速に増加している。英蘭《イングランド》では、人口はフランスよりも急速に増加しているが、しかも英蘭《イングランド》では、脱漏を斟酌すれば、出生の結婚に対する比率は四対一であり、フランスでは四・五分の四対一である。アメリカに生じたような急速な増加を生ぜしめるためには、実際、あらゆる増加原因を発揮せしめる必要があろう。そしてもし結婚の出産性が非常に大であるならば、出生の結婚に対する比率は確かに四対一以上であろう。しかし、全生殖力が発揮される余地のない一切の通常の場合においては、現実の増加が、大きな死亡率を伴う大きな程度の出産性よりも、成人となり結婚するまで生存する産児の比率を大ならしめる幼少年期の優秀な健康状態により、生ずる方が、確かにより[#「より」に傍点]よいことである。従って一切の通常の場合においては、四または四以下対一という出
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