意を惹いた。
ノルウェイの死亡率がかくも少ないのは、何か特有な空気の健康性によると同様に、人口に対する予防的妨げの普及によるものなることもまた、疑いはなく、気候や土地が住民の一般的健康に非常に有利だと想像せしめるものは何もない。しかしあらゆる国において、主たる死亡は極めて幼い小児の間に生ずるのであるから、気候が等しく健康的であると仮定しても、ノルウェイでは他国よりも全人口に比して極めて幼い小児の数が少ないので、当然に死亡率が小さくなるのである。
ノルウェイの死亡率が低い主たる理由の一つは、都市が小さくかつその数が少なく、そして不健康な工場に雇われているものがほとんどないことだ、とおそらく云われるであろうが、これはもっともなことである。他の国の農村の多くでは、人口に対する予防的妨げは同じ程度には行われていないが、死亡率はノルウェイと同じほど小である。しかしこの場合に計算は特定の村に限られるのに、他方ノルウェイの場合は四十八分の一という数字は全国に関するものであることを、忘れてはならない。これら村落の過剰人口は絶えざる都市移住によって処分され、また教区で生れたものの大部分の死亡は記録簿には現われない。しかしノルウェイでは、すべての死亡は計算に入ってき、そしてこの国が養い得る以上に生れる場合には、何らかの形で大きな死亡率が生じなければならないことは、明かである。人は疾病によって殺されなければ、飢餓によって殺されるであろう。従って大きな外国への移民がなく、国の資源が著しく増加するということがなければ、ノルウェイでは、いかに空気が清浄であろうとも、またその国民の職業がいかに健康的であろうとも、人口に対する予防的妨げの普及の拡大以外には、他国以下の死亡率を生ぜしめるものはあり得ないのである。
ノルウェイは古来、ゴオルスと呼ばれる大きな地所または農場に分たれていたようである。そして相続法によればすべての兄弟は財産を平等に分割するのであるから、これらの地所はますます再分されなかったのは、驚くべきことであり、また人口がこれまでいかに遅々たる増加しかしなかったかを示す証拠である。現在はそれらの多くはなるほど半ゴオルス、四分の一ゴオルス、またはそれ以下に分割されている。しかし従来一般に、父親が死亡した場合、委員は地所の価値を低い率で評価する習慣があり、そしてもし長男がこの評価に従っ
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