<bト教徒の家族よりも子供の数が多い、と一般に云われている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。これは驚くべき事実である。けだし一夫多妻は女子の不平等な分配を生ぜしめるので、全国の人口にとっては当然不利であるけれども、多数の妻を養い得る個人は、事の性質上当然に、一人の妻しかもたぬ者よりも、多数の子供をもつはずである。ヴォルネエはこれを主として、一夫多妻の慣行と非常な早婚によりトルコ人は若年で老衰し三十歳で生殖不能なのはごく普通だということで、説明している2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。イートンは不自然な罪悪が少なからず平民の間で行われていると述べ、そしてこれをもって人口に対する妨げの一つと考えている3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。しかし彼が列挙している人口減少の五大原因は次の如くである。
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一、この帝国が今まで完全に免れたことのない疫病《ペスト》。
二、少なくともアジアにおいては、疫病《ペスト》にほとんど常に伴生する恐るべき数の疾病。
三、アジアにおける伝染病及び風土病、これは疫病《ペスト》そのものと同様の恐るべき暴威をたくましくし、そしてしばしば帝国のこの地方を襲うものである。
四、飢饉。
五、最後に、常に飢饉に伴生し、しかもこれよりも大きな死亡を生ずるところの、数々の疾病4)[#「4)」は縦中横、行右小書き]。
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 1)[#「1)」は縦中横] Eton's Turkish Emp. c. vii. p. 275.
 2)[#「2)」は縦中横] Voy. de Volney, tom. ii. c. xl. p. 445.
 3)[#「3)」は縦中横] Eton's Turkish Emp. c. vii. p. 275.
 4)[#「4)」は縦中横] Id. p. 264.
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  彼は、その後に、帝国各地方における疫病《ペスト》の暴威をもっと詳しく述べ、そして結論を下して、もしマホメット教徒の数が減少したとすれば、かかる結果を生ずるには、この原因一つだけで十分なのであり1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、そして事態が現状のままに進むとすれば、トルコの人口は一世紀経てば絶滅してしまうであろう、と云っている2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。しかし、この推論と、それに関する計算とは、疑いもなく誤っている。死亡率の高い期間と期間との中間期における人口増加は、おそらく彼が気がついているよりも大であろう。同時にまた、農民の勤労がその必要な欲望の充足だけに限られており、農民は単に餓死を免れるためにのみ播種し、そして何らの剰余生産物をも蓄積し得ないような国においては、人民の大きな喪失は容易には恢復されるものではなく、けだし人口の減少より生ずる自然的結果は、勤労が栄え財産が安固な国におけると同じ程度には、感ぜられ得るものではないから、ということも、述べておかなければならぬ。
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 1)[#「1)」は縦中横] Eton's Turkish Emp. c. vii. p. 291.
 2)[#「2)」は縦中横] Id. p. 280.
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 ペルシアの立法者ゾロアスタアによれば、樹木を植え、畑を耕し、子供を産むのは、讃《ほ》むべき行為である。しかし旅行家の記述からすれば、下層階級の者の多くは、この後に挙げた種類の名誉は容易には得られそうもないようである。そしてこの場合は、他の無数の場合と同様に、個人の私的利害が立法者の誤謬を是正する。サア・ジォン・チャアディンは、ペルシアにおいては結婚は非常に金がかかり、従って財産家のほかは破産をおそれて、結婚をあえてしない、と云っている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。ロシアの旅行者もこの記述を確証するかの如くであり、すなわち、下層楷級のものは結婚をおそくまで延期せざるを得ず、また早婚が行われるのは富者の間だけである、と云っている2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。
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 1)[#「1)」は縦中横] Sir John Chardin's Travels, Harris's Collect. b. iii. c. ii. p. 870.
 2)[#「2)」は縦中横] 〔De'couv. Russ. tom. ii. p. 293.〕
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 ペルシアが数百年もの間不断に悩まされている恐るべき動乱は、この国の農業に対し致命的であったに違いない。外戦と内乱から免れた期間は短くその数は少なかった。そして申し分のない平和な時期においてすら、辺境諸州は絶えず韃靼人の蹂躪に身を委ねていたのである。
 かかる事態の結果は予期し
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