』
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1)[#「1)」は縦中横] Id. p. 379.
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以上はヴォルネエがシリアにおける農民の状態について記した描写であるが、これはこれらの地方を旅行したすべての旅行者により確証されているようである。そしてイートンによれば、これはトルコ領の大部分の農民の境遇を極めてよく表わしているものである1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。一般にあらゆる名称の官職は公売に附され、またあらゆる地位の処分を決定する宮廷内の謀議においては、万事は賄賂で決定される。その結果として、諸州に送られるパシャは極度にその請求の権力を発揮する。しかしパシャは常にその直属部下に出し抜かれ、その部下はまたその配下に誅求《ちゅうきゅう》の余地を残すのである2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Eton's Turkish Emp. c. viii. 2nd ed. 1799.
2)[#「2)」は縦中横] Id. c. ii. p. 55.
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パシャは、貢納を支払い、また彼れの地位の買収費を償い、その威厳を保ち、そして事故の場合に備えるために、貨幣を徴集しなければならない。そして文武双方の一切の権力は、サルタンの代表者たることにより彼れの一身に集中しており、そして手段は思うままになるのであるから、最も早いのが最上策と常に考えられている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。明日のことはわからぬのだから、彼は自分の州を単なる一時的所有物として取扱い、多年の収穫を出来れば一日で刈り取ろうとし、その後任者のことや、また彼が永久的収入に及ぼすべき損害などは、少しも顧慮するところがないのである2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Voy. de Volney, tom. ii. c. xxxiii. p. 347.
2)[#「2)」は縦中横] Id. p. 350.
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耕作者は必然的に都市の住民よりもかかる請求により[#「より」に傍点]多く曝されている。耕作者はその職業の性質上一定地点に定住しており、また農業生産物は容易には隠匿され得ない。その上、借地権及び相続権は不確実である。父が死ぬと、遺産はサルタンに戻り、そして子供は多額の金を出さなければ相続権を買い戻すことが出来ない。かかる考慮から当然に土地財産に対し冷淡の風が生ずる。地方は荒廃し、各人は都市に逃亡しようと望むが、都会では彼は啻に一般により[#「より」に傍点]善い待遇を受けるのみならず、貪婪な支酎者の眼からより[#「より」に傍点]容易に隠匿し得る富を獲得する望があるのである。
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1)[#「1)」は縦中横] Voy. de Volney, tom. ii. c. xxxvi. p. 369.
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農業の破滅を全たからしめるものとして最高価格が多くの場合に定められており、そして農民は都市にその穀物を一定の価格で供出させられている。すべての大都市で穀価を低くしておくことは、トルコの政策の公理となっているが、これは政府の弱体と、大衆暴動蜂起の恐怖とから発するものである。凶作の場合には、少しでも穀物を所有しているものは一定の価格でそれを売ることを強制され、従わぬものは死刑に処せられる。そして近隣に穀物がない場合には、他地方から徴発される1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。コンスタンチノウプルが食糧不足になれば、これに供給するためにおそらく十州が飢えさせられるのである2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。ダマスカスにおいては、一七八四年の凶作のとき、人民は一ポンドのパンに対しわずか一片四分の一を支払っただけであるが、他方村落の農民は絶対的に餓死しつつあったのである3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Id. tom. ii. c. xxxviii. p. 38.
2)[#「2)」は縦中横] Id. xxxiii. p. 345.
3)[#「3)」は縦中横] Id. c. xxxviii. p. 381.
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かかる政治制度が農業に及ぼす影響は多言を要しない。生活資料の減少の原因は明白すぎるほど明白である。そしてかかる減少しつつある資源の水準に人口を抑圧している妨げは、これとほとんど同等に確実に辿り知ることが出来るのであり、すなわちそれは知られている限りのほとんどすべての罪悪及び窮乏を含むものなることが分るであろう。
クリスト教徒の家族は、一夫多妻が行われているマホ
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