、そして人口の点では北アメリカのほとんど沙漠のようなところにも遥かに劣っていたことを考えるならば、この地方の現状と、ロシア人が数では現住民より遥かに多くいることとに、吾々は当然驚嘆する、と云つているが4)[#「4)」は縦中横、行右小書き]、まことにその通りである。
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1)[#「1)」は縦中横] Tooke's View of the Russian Empire, vol. ii. p. 242. かかる外国人招致の主たる結果は、おそらく、奴隷に代えての自由民、ロシア人の怠惰に代えてのドイツ人の勤労の、導入であろう。しかし機械の形での資本の導入は非常に大きな点であり、そして製造品の低廉に引かれて耕作者はまもなくそれに対する嗜好を得ることであろう。
2)[#「2)」は縦中横] Voy. de Pallas, tom. iii. p. 10.
3)[#「3)」は縦中横] Id. tom. iv. p. 3.
4)[#「4)」は縦中横] Id. p. 6.
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パラスがシベリアにいたとき、これらの肥沃な地方、特にクラスノヤルスクの附近では、食糧品は法外に安かった。一プウドすなわち四十ポンドの小麦粉は約二|片《ペニー》半で売られ、一頭の牡牛は五、六|志《シリング》、また牝牛は三、四|志《シリング》で売られた1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。土壌の生産物に対し販路が無いのによるこの異常な低廉が、おそらく勤労に対する主な妨げであった。その後数年の間に物価はかなり騰貴した2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。従って吾々は、所期の目的は著しく達せられ、そして人口が急速に増加している、と結論することが出来よう。
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1)[#「1)」は縦中横] Voy. de Pallas, tom. iv. p. 3.
2)[#「2)」は縦中横] Tooke's View of the Russian Empire, vol. iii. p. 239.
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しかしながらパラスは、シベリア植民に関する女帝の意図は必ずしも常にその臣下によって十分履行されたわけではなく、そしてこのことを委ねられた資産家は、しばしば年齢、疾病、及び勤勉性の不足という点で、あらゆる点から見てこの目的に合致しない移住民を送った、と喞っている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。パラスによれば、ヴォルガ河附近の地方のドイツ移民ですら、この最後の点では欠けているというが2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]、これはたしかに最も本質的な点である。実に、勤労の習慣の輸入は、一国の人口にとり、単に数の上から考えた、男女の輸入よりも、限りなく重大なことであると云つて、間違いない。全人民の習慣を一挙に変え、そして思うがままに勤労を指導することが出来たならば、いかなる政府も外国移民を奨励するようなことをしなくとも済むであろう。しかし久しきに亙る習慣を変えるということは、すべての企ての中で最も困難なものである。シベリアの農民が英蘭《イングランド》の労働者のもつような勤労心と活動性とをもつようになるには、最も好郡合なる事情の下においても、多年の日時が経過しなければならない。そしてロシア政府はシベリアの牧畜民を農業に転向させるために不断の努力を払って来ているけれども、しかも多数のものは、彼らをその有害な懶惰《らんだ》から脱却せしめ得るあらゆる企図に対して、頑固な反抗を続けているのである3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Voy. de Pallas, tom. v. p. 5.
2)[#「2)」は縦中横] Id. p. 253.
3)[#「3)」は縦中横] Tooke's Russian Empire, vol. iii. p. 313.
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右の外多数の原因が、ロシア植民地の人口が生殖力の許す限り急速に増大することを妨げている。シベリアの低地地方の一部は、沼沢が多いので不健康であり1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、そして損害の大きい大流行病が頻々と家畜を襲っている2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。ヴォルガ河附近の地方では、土壌は自然的には富んでいるけれども、しかし旱魃が頻々と起るので、三度に一度以上の豊作は滅多にない3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。サラトフの入植者は、入植後数年にして、二つの原因によって他の地方に移住せざる得なくなり、そして百万ルウブル以上に及ぶ彼らの家屋建築費の全額が、女帝から送附された4)[#「4)」は縦中横、行右小書き]。安全の目的のためかまたは便宜の目的のために、各植民
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