[#「2)」は縦中横] Id. c. xxiii. p. 312.
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しかしながら、この荒廃状態の原因は、黒人諸民族の一般的習慣に関するパアクの記述によって明瞭にわかる。彼は云う、無数の小国に分たれ、それが大砥独立して互いに嫉視している国においては、ほんのつまらぬ挑撥《ちょうはつ》からしばしば戦争が起ると想像されることは当然である。アフリカの戦争には二種類あり、その一つはキリイと呼ばれるもので公然の戦争であり、他方はテグリアで、掠彰または窃盗である。この後者はごく普通であり、殊に旱魃期の初期に、収穫が終って食料が豊富な時に多い。かかる掠奪行は常に迅速な復讐を惹き起す1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Park's Africa, c. xxii. p. 291 and seq.
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かくの如く不断に掠奪に曝されているために生ずる財産の不安固は、必然的に、勤労に最も有害な影響を与えずにはおかない。すべて辺境地方の荒廃状態は、これがどの程度に作用するかを十分に証明している。気侯の性質は、黒人諸民族が労働するのに適しない。そして、彼らの労働の剰余生産物を利用する機会は多くはないから、吾々は、彼らが一般に、自分自身を養うに必要なだけの土地を耕すので満足しているのに、驚くことはない1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。これらの原因は、この国が未開墾状態にある理由を説明するに足るように思われる。
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1)[#「1)」は縦中横] Park's Africa, c. xxi. p. 280.
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かかる不断の戦争及び掠奪侵入における生命の浪費は、莫大でなければならぬ。そしてパアクは、暴力的原因は別としても、黒人の間では長生きは稀であるというビュフォンの説に同意している。彼は云う、大抵の黒人は四十歳で白髪皺顔となり、五十五歳ないし六十歳まで生きる者はほとんどない1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、と。ビュフォンはこの短命の理由を、尚早な性関係及び若年からの過度の放蕩に帰している2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。この点については彼はおそらく誇張しているかもしれぬ。しかしこの原因に頼り過ぎなくとも、自然的類推に従って、熱帯の土民は寒国の住民よりもはるかに早く成人になるのであるから、死別もまた早いと考えてよかろう。
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1)[#「1)」は縦中横] Park's Africa, c. xxi. p. 284.
2)[#「2)」は縦中横]『女子が未成熟のうちに関係することが、おそらく、その短命の原因であろう。子供は極めて放恣で父母の拘束を受けないので、年少のうちから本能の命ずるままに耽溺する。この人民の間では、処女でなくなった時を想起し得る娘を見出すほど珍しいことはない。』Histoire Naturelle de l'Homme, vol. vi. p. 235. 5th edit. 12mo. 31 vols.
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ビュフォンによれば、黒人の女子は極度に多産である。しかしパアクによれば、彼らはその子供をニ、三年も授乳する習慣があり、そして夫はこの期間中他の妻達にもっぱら心を向けているのであるから、各々の妻の有つ子供の多いことは滅多にないように思われる1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。一夫多妻は黒人諸民族では一般に認められている2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。従って、吾々が当然想像すべき以上の数の女子がいない限り、多くの者は未婚生活を送らざるを得ないであろう。この困難は主として、パアクによれば自由人に対し三対一の比例をとるという、奴隷の肩に振りかかるであろう3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。主人は、自分の家庭の奴隷、または自分の家で生れた奴隷は、飢饉の場合の外は、自分やその家族を支えるために売ることを許されない。従って吾々は、主人は、奴隷にさせる仕事に必要な以上にそれを増加させることはあるまい、と考えてよかろう。買った奴隷や戦争で得た捕虜は、全く主人の意のままに委ねられる4)[#「4)」は縦中横、行右小書き]。彼らはしばしば極度の虐待を受け、自由人の一夫多妻により女子が不足な場合には、もちろん女は容赦なく奪われる。厳格な独身状態にある女子はおそらくほとんどまたは全くいないであろう。しかし結婚者数の割合には、かかる社会状態は、人口増加に好都合であるようには思われない。
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1)[#「1)」は縦中横] Park's Africa, c. xx. p. 265. パアクの記述と、ビュフォンが論拠としている記述
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