Kまたは家族に対する恐怖から来る結婚の抑制が、どの程度までかかる結果を齎す上に寄与しているかを、吾々に告げない。しかしおそらく、彼らの民事制度及び放縦な掠奪精神について彼が与えている記述がそれだけで、ほとんどこれを説明するに足るであろう。チャンは、人民によって選ばれた有力者の会議を通してでなければ、その権能を行使し得ない。そしてかくして確認された法令ですら、絶えず侵害されしかも少しも処罰されない1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。キルギス族が、その隣人たるカザルパック族、ブカリア族、ペルシア人、トルチェメン族、カルマック族、及びロシア人に対して行う、人間や家畜や商品の掠奪と分捕は、彼らの法律により禁止されているけれども、しかも何人もこれを行ったのを自白するのを恐れる者はない。反対に彼らは、この種の成功をもって、最も名誉ある事業なりとして誇るのである。時に彼らは財宝を求めて単独で国境を越え、時には有能な酋長の指揮下に隊をなして集り、全隊商を掠奪する。多数のキルギス人は、この掠奪を行うに当って、殺されるかまたは奴隷として捕われるが、しかしこれについては民族そのものはほとんど何も困らない。私的冒険者が、かかる掠奪を行う場合には、家畜であろうと女子であろうと、各人は自己の得たものをその手許に止める。男子の奴隷と商品は富者または外国商人に売渡される2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。
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 1)[#「1)」は縦中横] 〔De'couv. Russ. tom. iii. p. 389.〕
 2)[#「2)」は縦中横] Id. p. 396, 397, 398.
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 この種族の擾乱的な性向から極めて瀕々《ひんぴん》と起る1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]民族的戦争に加うるに、右の様な習慣があるのであるから、吾々は、暴力的原因による人口に対する妨げが、ほとんど、一切の他の原因を排除してしまうほどに強力なのであろうということを、容易に理解し得よう。彼らが荒廃的戦争を行い2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]、苦難の掠奪侵入を行っている時に、また久しい旱魃や家畜の死亡によって、随時的の飢饉が時々彼らを襲うこともあろう。しかし普通の事態では、貧困が迫って来るので、新たな掠奪遠征が起ることになるのであろう。そして貧しいキルギス族は、自己を養うに足るだけのものを得て帰るか、またはその企図中にその生命または自由を失うかであろう。富者たらんかまたは死と決心をきめ、しかも手段を選ばない者は、貧乏人として永くは生きうることを得ないものである。
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 1)[#「1)」は縦中横] 〔De'couv. Russ. tom. iii. p. 378.〕
 2)[#「2)」は縦中横]『この群衆はその途上にあるあらゆるものを蹂躪し、自ら消費しないあらゆる家畜を持ち帰り、虐殺しない老若男女を奴隷とする。』Id. p. 390.
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 一七七一年の移住以前には、ロシアの保護の下にヴォルガの肥沃なステップに住んでいたカルマック族は、大体においてこれと異った生活様式をしていた。彼らはたびたびは残虐な戦争をしなかった1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。そしてチャンの力は絶対であり2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]、民政はキルギス人よりもよく行われていたので、私的冒険者の掠奪遠征は阻止されていた。カルマック族の女子は極めて多産的である。結婚して子供のないことは滅多になく、一般に小屋の周りごとに三、四人の子供の遊んでいるのが見られた。このことから(とパラスは云う)彼らがヴォルガのステップに平穏に暮していた百五十年間に、大いに増殖したに相違ない、と当然結論し得よう。実際は彼らが期待したほどに増加しなかったということに対し彼が与えている理由は、落馬による多くの事故、彼らの種々の王侯やまたは彼らの種々なる隣人との間の頻々たる小争闘、殊に飢餓や窮乏による貧民階級の多数の死亡、及び子供が最もその犠牲となるあらゆる種類の災厄である3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。
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 1)[#「1)」は縦中横] 〔De'couv. Russ. tom. iii. p. 221.〕 この種族はここではトルゴット族の名で記されているが、これは彼らに適当な名称である。ロシア人は彼らを呼ぶにもっと一般的なカルマック族という名をもってした。
 2)[#「2)」は縦中横] Id. p. 327.
 3)[#「3)」は縦中横] Id. p. 319, 320, 321.
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 この種族がロシアの保護の下に投じて来た時は、彼らはスウンガアル族から分れて来たのであり、その数は決して
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