コげ終わり]
しかしながら、狩猟民族と同様に牧畜民族についても、もし欠乏だけで習慣が一変し得るものなら、牧畜民族で残存しているものはほとんどないだろうと云い得よう。ベドウィーン・アラビア人は絶えず戦争をしており、またその生活方式の困難から生ずるその増殖に対するその他の妨げがあるにもかかわらず、その人口は、その食物の限界を著しく緊密に圧迫しており、ために彼らは必要上節欲を余儀なくされておるが、この節欲たるや、古くからの不断の習慣がなければ到底人体が支え得ぬ如きものである。ヴォルネエによれば、アラビア人の下層社会は習慣的な窮乏と飢饉の状態に生活している1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。沙漠の諸種族はマホメットの宗教が彼らのためにつくられたことを否定する。彼らは曰く『けだし吾々は水のない時にどうして水浴をすることが出来ようか。吾々は富を有たないのにどうして喜捨をすることが出来ようか。また吾々は一年中断食しているのに、どうしてラマダン月の間断食をする機会があり得ようか2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。』
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1)[#「1)」は縦中横] Voy. de Volney, tom. i. c. xxiii. p. 359.
2)[#「2)」は縦中横] Id. p. 380.
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チャイクの力と富とは、その種族の数にある。従って彼はそれがいかにして養われ得べきかを考えることなくして、人口の増加を奨励するのを利益と考えている。彼自身の地位は大いに子孫と近親の数の多いことに依存している1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。そして一般に力が食物を獲得するという社会状態においては、個々の各家族は家族の人数から力と重要性とを得ることとなる。かかる観念は、有力に、人口増加に対する奨励金たる作用をする。そしてそれは、ほとんど財貨の共有を生じているほどの物惜しみしない精神2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]と相俟って、人口をその極点まで押し進め、そして人民全体を最もはげしい貧困に陥れるのである。
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1)[#「1)」は縦中横] Voy. de Volney, tom. i. c. xxiii. p. 380.
2)[#「2)」は縦中横] Id. p. 366.
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一夫多妻の習慣は、戦
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