ニによって、人口の過剰を惹き起す役割を果したのであり、すなわちその国の乏しい食物が養い得る以上の人口を生ぜしめる役割を果したのである。
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1)[#「1)」は縦中横] Hist. Dan. tom. i. c. ix. p. 207.
2)[#「2)」は縦中横] 『諸君は彼らに、敵を呼び傷を求めよとは容易に説得することが出来るが、、土地を耕し歳月を待てとはそれほど容易には説得し得ないであろう。血をもって得られるものを汗をもって得ることは、怠惰、怯懦と考えられている。』Tacitus de Mor. Germ. 実際人類の歴史上、習慣を変更するの甚だしく困難なることほど明かなるものはない。従って、その土地を適当に使用しない人民は欠乏に悩まない、と推論することほど、誤った議論はあり得ないのである。
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何故に、貧弱な、寒い、人口稀薄な国が、一般に人口過剰となる傾向を有ち、強く移住を促されるかということにつき、それほど注意されないもう一つの原因がある。より[#「より」に傍点]温いより[#「より」に傍点]人口稠密な国、特に大都会と工業の多い国においては、食物の供給不足が長く続けば、ほとんど間違なく、暴威を振う大きな疫病の形でか、またはこれより激しくないが、しかし慢性的な疾病の形で、流行病をもたらさずにはおかない。貧弱な、寒い、人口稀薄な国では、これに反し、空気が防腐的性質を有つので、食物の不足または不良から生ずる窮乏がかなり続いても、かかる結果は生ぜず、従って移民を促すこの強力な刺戟は遥かにより[#「より」に傍点]長く働き続けるのである1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] 伝染病の周期の遅速は、土壌、位置、空気等の如何《いかん》によってきまる。従ってエジプトやコンスタンチノウプルの如きでは毎年来襲し、トリポリやアレッポの附近の如きでは、四、五年に一度来襲し、英蘭《イングランド》の如きでは十、十二、または十三年に一度来襲するかしないかである、ノルウェイ及び北方諸島[#「ノルウェイ及び北方諸島」に傍点]の如きでは二十年以内には来襲しない。Short, History of Air, Seasons, etc., vol. ii. p. 344.
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