アれは主として前版の公刊後に生じた事実に関するものである。
 第三篇では『貧民法』に関する一章を加えた。そして『農業及び商業主義』を論ずる章と『富の増加が貧民に及ぼす結果』を論ずる章とは適当に整えられてもいなければまた主題にすぐ適用することも出来ないように思われ、その上私は『輸出奨励金』を論ずる章で若干の変更を試み、『輸入禁止』の問題に関して若干附加しようと思ったので、これ等の章を書き改めることとした。これ等はこの版では第八、九、十、十一、十二、十三の諸章となっている。更に同篇の最後の第十四章には新らしい名前を附して二三の章句を附加した。
 第四篇では私は『貧困の主要原因に関する知識が政治的自由に及ぼす諸影響』と題する章に新らしい一章を加え、また『貧民を改善する種々なる企劃』を論ずる章にも一章を加えた。また私は『附録』にもかなりの増補を試み、前版以後に現れた『人口原理』を論ずる二、三の論者の論作に答弁を与えた。
 この版で行われた主たる増補と変更とは以上の如くである。これは大部分『人口論』の一般諸原理を現在の事態に適用したものである。
 前の諸版の購買者の便宜のために、以上の増補と変更は別冊で公刊することとする(訳註)。
   一八一七年六月七日
     東印度大学において
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〔訳註〕これは次の形で出版された。
Malthus, Additions to the fourth and former Editions of an Essay on the Principle of Population, &c. &c. London 1817.
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[#改ページ]

       第六版前書
        一八二六年一月二日

 この版で行った増補は主として、一八一七年にこの前の版が現れて以後新らしい人口調査や出生、死亡及び結婚の記録簿が現れた国の人口の状態に関し、記録や推論を若干加えた点にある。それは主として英蘭、フランス、スウェーデン、ロシア、プロシア、及びアメリカに関するものであり、従ってこれら諸国の人口を取扱う章に現れている。『結婚の出産性』を論ずる章では表を一つ加えたが(第一巻四九八頁)(訳註1)、これは現在若干の国で行われている十年ごとの人口調査の中間期の人口増加百分比率からその倍加期間またはその増加率を示すものである。『附録』の終りには私がゴドウィン氏の最近の著書(訳註2)に答えない理由を簡単に述べてある。本書の他の部分では小さな変更や訂正が行われているが、これはいちいち指摘する必要はない。また若干の註を加えたが、その中《うち》主要なるものは、自由貿易下のオランダにおける穀物の変動を論じ、一国の食物の不足はある他国のその豊富なることによって一般に相殺されると考えるのが誤りなることを述べたものである(第二巻二〇七頁――訳註、原書の頁である)。
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〔訳註1〕第二篇第十一章最後の表を指す。
〔訳註2〕Godwin, Of Population. An Enquiry concerning the Power of Increase in the Numbers of Mankind, being an Answer to Mr. Malthus's Essay on that Subject. London 1820. ――これは、マルサス『人口論』によって全く忘却の中に陥しいれられたゴドウィンが、デイヴィド・ブウス David Booth の助力を得て著した最後の必死のマルサス反駁書である。
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底本:「各版對照 マルサス 人口論※[#ローマ数字1、1−13−21]」春秋社
   1948(昭和23)年10月15日初版発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
その際、以下の置き換えをおこないました。
「凡ゆる→あらゆる 或る→ある 如何→いか 何れ→いずれ 一々→いちいち 愈々→いよいよ 於いて→おいて 於ける→おける 恐らく→おそらく 凡そ→およそ 拘らず→かかわらず 傍ら→かたわら 且つ→かつ 嘗て→かつて 可成り→かなり 予て→かねて かも知れ→かもしれ 位→くらい 蓋し→けだし 極く→ごく 此処彼処→ここかしこ 毎→ごと 而も→しかも 然らば→しからば 然る→しかる 然るに→しかるに 屡々→しばしば 直ぐ→すぐ 精々→せいぜい 是非→ぜひ 度い→たい 沢山→たくさん 唯→ただ 但し→ただし 為め→ため 一寸→ちょっと 就いて→ついて 就き→つき (て)見→(て)み (て)貰→(て)もら 乃至→ないし 乍ら→ながら 成るべく→
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