@ 第三版前書(訳註――第三、四両版のみに掲載)

 この版の主たる変更は次の如くである。
 第二篇の第四章及び第六章となっていた章は、記録簿の資料から結婚の出産性と結婚まで生存する産児の数とを測定せんとする際に著者が誤りを犯していたので、ほとんど書き改めた。そこでこれらの章はその内容が前版ではそのすぐ前の諸章と続いていたが今度はそうではなくなったので、この篇の後ろの方に移すこととし、第九章と第十章とにすることとした。
 同篇の中『英蘭における人口に対する妨げ』を取扱う章には、前世紀を通じて出生の比例はほとんど均一であったと考えることが正しくなく、従ってかかる論拠に基いて異る時期の人口を測定するのが正しくないことを証示するために、一記述を加えてある。
 第三篇第五章には、一時的の困窮期には貧民を扶助するのが得策でもあれば義務でもあることを論じた一文を挿入した。また同篇の第七、八、九、十の諸章では章句を削除したり挿入したりした。これは穀物輸出奨励金を取扱う第十章において特に甚だしいが、けだしこの問題は現在重要性を有し、最近大いに論ぜられているからのことである。
 第四篇第六章では一章句を削除し、善政が貧困を減少するの結果を論じた一章句を加えた。
 同篇の第七章では一章句が削除された。また第八章では既婚者と未婚者との比較を論じたかなりに長い章句を削除し、そして吾々は道徳的抑制の義務を説いてはいるものの結婚が望ましいものなることを軽視してはならぬことを述べた一文を加えた。
 最も顕著なる変更は以上の如くである。その他は単に誤解を防ぐために少数の用語上の訂正を試み、ここかしこに短い章句や説明用の註を加えただけである。この種の小さな訂正は主として最初の二箇章に行われている。
 上述の変更は本書の原理に影響を及ぼすものではなく、従って四折版(訳註)の価値を本質的に減ずるものではないことを、読者は見るであろう。
[#ここから2字下げ]
〔訳註〕第二版を指す。
[#ここで字下げ終わり]
 附録には『人口論』に対する主要反対論への答弁が収められている。そして前版の購買者の便宜上これは四折で印刷の上別個に手に入れることが出来る(訳註)。本書の全体を読了する余暇や気持のない人々は、この附録を見れば、本書の中心的な論点を知り得てもって全体の目的と傾向とをほぼ知ることが出来るであろう。
[#ここから2字下げ、折り返して3字下げ]
〔訳註〕これは次の形で出版された。
Malthus, Reply to the chief Objections which have been urged against the Essay on the Principle of Population. Published in an Appendix to the third Edition. London 1806.
[#ここで字下げ終わり]
 上下両巻をなるべく同じ大きさにするために印刷者の方で両巻の『索引』を第一巻の終りの方に附することとした。『附録』と『索引』とがこんなに長くなろうとは初めは分らなかったが、もし分っていたら両巻をもっと都合よく分割したことであろう。
[#改ページ]

       第五版序言(訳註――第五、六両版に掲載)

 この『人口論』は、大戦争があり同時に特殊の事情によって外国貿易が極めて栄えた時期に、はじめて公刊された。
 従って本書は人間に対し異常な需要があり、人口過剰から何等かの害悪が生ずる可能があるとはほとんど考えられない時に、公衆の前に現れた訳である。こういう不利益があったのであるから、その成功は合理的に期待され得べかりし程度以上のものであった。従って、その次の時期はこれと種類を異にして最も著しくその原理を例証しその結論を確証した時期となったが、この時期には本書はその興味を失わないものと考えられ得よう。
 従って、問題の性質は永久的興味を有し将来それには多くの注意を払われるであろうと考えらるべきものであるから、私としては、その後の経験と知識とによって私が知り得た本書の誤りを正し、かつ本書を改善しその有用性を一層大ならしめる如き増補や変更を加えざるを得ないのである。
 この問題の前半についてもっと多くの歴史的例証を加えるということならば容易なことであったであろう。しかし私が前に述べた如くに、各特定の妨げが自然増加力を各々どれだけ破壊するかを確証すべき十分正確な記述はやはり得ることが出来ないので、手に入れ得る唯一種類の極めて豊富にある証拠から私が前に得た結論は、全く同じ種類の証拠をもっと集めてみた所でその力を加えるものではないように私には思われた。
 従って最初の二篇では増補はフランスに関する新らしい一章と英蘭に関する一章とだけであり、
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