掲載)
以下の論文は、もと、ゴドウィン氏の著『研究者』中の論文の問題すなわち貪慾と浪費(訳註)について、一友と交わした会話に由来するものである。この討論は、社会の将来の改善に関する一般的問題を提起した。そこで著者は、最初は、その友人に、会話で出来ると思われるよりもはっきりと自分の思想を紙上に述べてみるというだけの考えで、机に向かったのである。しかるにこの問題は、著者をして、従来考えてみもしなかった色々な考えに面せしめ、そして、かくも一般に興味ある問題に関しては、いかに微かな光でも、それはすべて公平に迎えられるに違いないと考えられたので、著者はこれを著作の形とすることに決心したのである。
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〔訳註〕次を指す、―― William Godwin, The Enquirer. Reflections on Education, Manners and Literature. In a Series of Essays. London 1797 : ―― Part II., Essay II. : Of Avarice and Profusion.
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議論全体を明かにするためにもっとたくさんの事実を集めたならば、この論文は疑いもなくもっと遥かに完全になったことであろう。しかし非常に面倒な仕事に長い間かつほとんど全く妨げられたのに加えて、出版期を著者が最初に申し出た時期以上にあまりおくらせまいという(おそらくは不謹慎な)希望をもったので、著者はこの問題に専心することが出来なかった。しかしながら著者はその蒐集した事実は、人類の将来の改善に関する著者の意見の真理なることを証する、少なからず有力な証拠をなすものなることが、わかるであろうと考える。著者が現在この意見につき思っているところによれば、これを確立するためには、社会に関する最も大雑把な観察に加えて、事実を平明に述べさえすればよいのであって、それ以上はほとんど必要はないようである。
人口は常に生活資料の水準に抑止されなければならぬということは、既に多くの著者が気づいていた明白な真理であるが、しかし著者の想起する限りでは、いかなる著者も、特別に、この水準が実現される仕方を研究したものはない。そしてこの仕方を考えるからこそ、著者にとっては、社会の将来の非常に大きな改善の途上には
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