である。一三、一四、及び一五はいわゆる穀物論争または地代論争に関するものであり、その論敵は主としてデイヴィッド・リカアドウであった。その中《うち》特に一四は、これあるが故に、マルサスは差額地代説の創説者の一人と称せられるのであり、これは元来東印度大学における彼れの講義に由来するものであって、後にそれは拡大されて一七の中に包含された。なお彼は一七を訂正増補する意図をもって加筆していたが、それは生前には出版されず、死後に至ってようやく出版された。それが一八である。彼はこの一七において既にリカアドウと価値について大いに争っているが、一九は端的にこのリカアドウとの価値論争の産物であり、一七において支配労働と穀物価格との中項をもって価値の尺度となした見解をここで改め、支配労働こそが価値の不変的尺度であると主張している。二〇及び二一は云うまでもなく百科辞典への寄稿であり、二一の内容は二五において再現されているが、しかし二五は彼自身の手になる出版ではないように思われる。
 右によって知られる如くに、マルサスはリカアドウと多年にわたって地代や価値やその他多くの問題について論争した。それは著書やパンフレットだけではなく、長年月にわたる多数の手紙の交換によっても行われた。ただしマルサスの手紙はリカアドウのものほどは残っていない。
 なお右に挙げた著書及びパンフレットのほかに、マルサスの書いた手紙や雑誌論文もかなり残っている。手紙は、残っているものとしては、リカアドウとの論争のものよりは、むしろ、人口理論に関するものの方がより[#「より」に傍点]重要である。
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 後記――この解説では、頁の制限があるので、ただ書き放しにしたに止り、立証引用が行われていないので、無責任な独断的記述と取られる虞《おそれ》がないでもないが、しかし次の拙著では私はこれらのことを立証すべく努めているから、神経質の読者には一応参照を願いたい、――
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マルサス人口論各版の差異(昭和七年、東北帝大)――経済学説研究、マルサスの人口・歴史・経済理論(昭和七年、第百書房)――マルサス批判の発展(昭和八年、弘文堂)――黎明期の経済学(昭和十一年、巌松堂)――新マルサス主義研究(昭和十五年、大同書院)
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       序言(訳註――第一版のみに
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