す。渡された月給の袋の中を調べて見て、予期した以上の内容に微笑することはないであろう。が、こちらもその月給をおろそかにはその袋には入れません。毎月二十五日の夜から翌二十六日の午後まで、各部からの報告全部が集まって来る。その月の総売上げと大入袋の金額と回数、その他の材料を大卓上にならべておき、あなた方に渡す手当の明細書の各項目に一つ一つ書き込む。貯金幾何、これは独身者に限るものです。遅刻何回、事故休み何回、病気休み何回は規則に従って差し引き、俸給|幾何《いくばく》、家持手当、子供老人手当、夕食代、これは所帯持ちに、配当、ボーナス等々合計○○○何々殿、年月日、と一人一人異なる事情と計算を書き上げる。
 これまでは千香子の仕事の領分として、だいたい書き上げたものを、主人と主婦がいま一度目を通して、誤りの有無、公平を欠くことはないかを調べる。遅刻と欠勤は理由の如何にかかわらず、必ず若干差し引かれる規定ではあるけれど、実際一家の働き手が病気した時は、見舞いという名義をもって補給してやらねばならぬ。そしてこれは単なる事務として他の家族に命ずる仕事ではないから、必ず主人自ら行います。こうして念には念
前へ 次へ
全236ページ中234ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
相馬 黒光 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング