小学生であった安雄も、餅搗きには印ばんてんや「あつし」を着て配達の手伝いをしました。冬の休みを利用して仙台から中学生の甥も見学だと称して出京し、安雄とコンビになって荷車の後押しや餅配達をやりました。
 その中でのおかしい話。西大久保のおとくいに夕方餅を配達すると、女中さんはこんな固いお餅じゃ切るのに骨が折れるのではないかとさんざんのお叱言、上餅は早く固くなるもので、陸稲《おかぼ》の粗悪な餅はいつまでもやわらかで伸びるものですが、安値な大福餅が夜になっても固くならないのは道理なのです。しかし先方の女中さんもこちらもそんなことを知らないからただ恐縮して、それならば搗きたてのお餅と取りかえて上げますといって、その餅を持ち帰りました。翌日甥と安雄はまだ温味の残っているのし餅をお届けしました。女中さんは大喜びで受け取ろうとすると、餅と餅がくっついて離れない。それを無理に引き離そうとして持ち上げたところ、四角にのした餅が伸びて形がつぶれてしまいました。けれど女中さんは自分の註文なので再び小僧を叱るわけには行かず、不承不承に受け取ったがいったいあの餅はどうなったろうという報告に、お気の毒やらおかしい
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