れそうになっていると見れば水を足し、火鉢の火が師走の夜風に煽られていれば黙って薬缶《やかん》をかけておく。一通り見まわりが済んで室に戻れば、主人は明日の餅の枚数に間違いはないか調べる。それを終って帯を解かずに床に入り、どうにかうとうとする頃には、工場で起きて餅搗きがはじまる。どしんどしん震動が夜の空気をふるわして枕にひびく。それもしまいには慣れるけれど、杵の数をかぞえていると少し足りない。はね起きて工場に下り、今のは杵の数が幾本少なかったと注意し、搗き手はまた文句をいうと煩さく思ったことであろうし、今から思えばずいぶん無理なことであったと気の毒にも思うのですが、よい餅を搗いておとくいの信頼に報いたいと一念それに励まされて、餅搗き中はしみじみ寝た夜もないのでした。また近所へは、のし餅を配り、夜中の騒がしさを一軒一軒お詑びして歩いたものです。
 三年目からは電力を用いて搗くことにしたので、搗きが若いという心配はなくなりましたが、今度は機械に故障が生じたら絶対絶命、仕事は全く不可能に陥る。これに対する苦心はまた格別で、手搗き時代の比ではなかった。機械が修繕されるまでみな手を空しくして待たねば
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