た販売品も相当なる品物を取扱ったために、権威もあり信用もあったのである。そして商品に対して正札制を確立したので、客は安心して買うことが出来るようになった。
一般小売店でも、正札をつけて置く店は、以前から少なくはなかったが、客が値切れば幾らかは値引する店の方が多かった。だから客の方では「言い値で買うのは馬鹿らしい」という考えを持ち値切るという事が買物常識の一つとなったのである。値切る客が多いから掛け値をする、掛け値があると見るから値切る。商人の方ではこれが商売の掛け引きであると考えている。しかるに百貨店では、商品の値に二色はないとして正直正銘と称する正札制を確立して、客をして買い易からしめる便宜を計った。この点は百貨店の功労であって敬意を表するに足りる。
ところがこの頃の状態は如何であるか、正札制を確立した百貨店自身が、日と時とを限って正札の割引をしたり、定価を変更したり、景品を出したり、福引をしている有様だ。
五十銭の品を三十銭に売って、原価販売と称しているが、三十銭が原価なら五十銭の定価は甚しい暴利であり、また五十銭が正直正銘の正札なら三十銭に売れる道理はない。「いやそこが社会
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