奉仕です」というかも知れぬが、損したり原価販売をして経営の成立つわけがない。必ず何かの点で、この埋合せをしているのである。つまり損して売るということは、結局その欠損を他の客へ肩代りさせているものである。
 かくの如き営業振りは、大道商人と何ら選ぶところがないのである。
 百貨店がこの有様であるから、多くの小売店も、対抗上やはりこの不堅実な営業振りを真似することになる。これでは正札の真価は失われてしまう。せっかく確立した商道を紊だすことは、日本の商人道の破壊である。実に慨嘆に堪えない次第である。

    小売店独特の戦術

 今までは一流百貨店では、特価品なるものはあまり取扱わなかった。特価品はすなわち「安かろう悪かろう」の品であるから、信用上取扱えなかったのである。
 しかるに今日では中等店で売るを潔しとせぬような品まで取扱っている。そして大衆的営業振りだと称している。
 特価品を取扱わなかったがために、在来は百貨店に対して、さほど小商店は痛痒を感じなかったのである。ところが右の如き大衆的営業振りを始めたので、小商店は初めて目をみはりながら狼狽し出した。どんどん得意先を百貨店に奪われ
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