に、生命保険をつけてやることにした。それは早大総長の田中穂積先生が、早大の勤続教授に実施していられるお話を聞いて、はじめたものであるが、非常にいい案だと思っている。ぜひ一般商店にも推薦したい。
 官吏には恩給制度があるが、一般にはこういう制度がないため、一家の主人が急死したりすると、遺族は立ちどころに困るという状態である。私の店では、そういう場合、相当の弔慰金は出す事にしているが、それだけでは心もとないというので、はじめたものである。店員に喜ばせ、ことに七八年勤続者などには、非常に励みを与えている。今年は八人であったが、十年後には五十人になる予定で、経費は一人当り年四十四円平均、一月一人三円五十銭くらいの僅かの掛金で済むし、だんだん掛金の支払額が軽減して来るから、昨年もそう負担を蒙らずに、老後の安心を与えることが出来る。

    彼を知り己を知るは戦って危からず

 支那の有名なる兵書に、
「彼を知り己を知るは百戦して危からず」
 という句があります。我々小売商が大百貨店を向こうにまわして、これと商戦を交えるに当り、彼の長所を見てこれに劣らざる工夫を為し、自ら短所を知って改むる事を怠
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