の便がよくなって来た今日では、暖簾分けなどする隙もないし、またしたところで、本店も分店もお互いに荒し合うだけで、いいことはなし、また資本の大きい本店に原則として勝てるわけがない。これが土地が変って、東京、大阪、福岡というふうに離れていれば別だが、それでも周囲の事情が違えば、同じ経営方針でやって行けないことになるから、本店の名に背くわけである。そういう意味で、私は一人一店主義を主張している。
以上のように、暖簾分けが出来ない事情にある当今では、商店員も会社員も同じようなことになって来ている。待遇さえ相当にして行けば、それでいいわけだし、店員もその方を結局喜んでいる。私の店でも、店員でいて、地所や宅地を相当買い込んで、老後を安楽に過せるようにしている者もある。独立して、店員時代より二倍も働いてようやくやっているよりは、店員でいる方がいいともいえる。しかしそれには、店員でいても、相当の生活がやって行けるように待遇してやらねばならないし、老後の安心の出来るようにして置いてやらねばならぬと思う。
それについて、私の方では今年の二月から、十年以上勤続者には千円、二十年勤続者には二千円というふう
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