店を構えて見れば生活がかえって上るのは当然で、また日々売上げがあって、誰のゆるしがなくても自由に出し入れ出来るとなれば、職人時代より支出が増加するのはたいていの場合あたりまえとせねばならない。従って最初の楽観は間違いで、この違算から新店は必ず失敗となる。
私の知人に外国貿易をしている者がある。収支ようやく償うくらいの商売であったが、昨年その子息が商科大学を卒業すると、番頭を解雇して子息をそれに代らせた。その時私にこれで一年約二千円の余裕が得られるという話であったから、私は彼に警戒して、大学出のお坊ちゃんは仕事は番頭の半分も出来ないでいて、小遣い、旅行費、自動車代など番頭よりはるかに多く使うものだ、気をつけないと二千円の余裕どころか、反対に二千円不足するかも知れんと言っておいた。この頃逢って見ると果して私の言った通りであった。
かつて私が玉子パンの製造実費計算を、その職長に命じたところ、やがて調べて出したのを見ると製造出来上がりの分量が、小麦粉、砂糖、バター、玉子などの原料と全く同量に出来上がっており、この売価は原料代のちょうど二倍になるという利益報告であった。ところが事実そんなは
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