満足出来るのであります。
 しかし世間の職長の気風はよくないものがあって、部下から何かを教えるに際し、いちいち報酬を要求するものがある。また月末給料の入ったのにつけこみ、花札、将棋、麻雀などに誘うてこれを巻上げる。あるいは飲食店につれこんで、一緒に飲食して、その勘定を負担させる。部下はそれに対し泣寝入りでついて行かねばならないなどというのが珍しくないが、かような輩はどれほど技術が優秀でも職長たるの資格はありません。主人は即時にこれを解雇すべきであります。
 次に、職長は自分の担任する部内で、何か失態を生じて、主人あるいはお得意に詫びなければならない場合となった時は、たとえそれが部下の過失であっても、自分はその部の長であるから、責任を負うて、部下に代って陳謝すべきであります。職長の中にはこれの出来ない人があって、往々部下に全責任を負わせ、自分は知らぬ顔で済まそうとする。これが単にその男の小心から出ることもあるが、とにかく少しでも責任を回避するところがあっては、人の上に立って信頼を得ることは出来ない。まず職長の資格はないものと言わねばなりません。
 しかしまた、部下に人気があるから必ずよい
前へ 次へ
全330ページ中60ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
相馬 愛蔵 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング