二代目が初代に及ばないのは、ちょうど質素な生活に慣れた地方人は都会に出て成功するが、贅沢の味をおぼえた都会人は、知識においてははるかに勝りながらこの地方人に敵わない、これと同じ道理であります。
 それゆえ昔から数代続いて繁栄の少しも衰えぬ家というのは、よほど代々の遺訓に力強いものがあり、そういう家の家憲を見ると、必ずそこには質素を第一とし、固く奢侈を戒めてある。子孫がこの家憲を守る家は長く栄え、守らぬ家は破滅する。それゆえ主人は相当に成功した後も自ら質素倹約の範を示して、家風を奢侈に委ねぬよう努力を尽し、順境において成人する子孫に充分の活力を保たせてやらねばならぬのであって、これが出来ねば自分一代は成功しても、主人学を完成したものとは言えぬのであります。
 この点米国人はなかなか徹底していると見えて、父は世に聞えた富豪であっても、その子弟は自ら働いて得た収入で、力相応に生活する習慣があり、大統領が幾千万ドルの生活をしても、いったんその職を退けば、同時に質素な一平民の生活にかえる、その生活の伸縮自在なところ、また自力尊重の一面は大いに敬服に値すると思います。どうも我々日本人は気前がよいと
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