、主人は部下を指導すると同時にその妻女を教育することが大切でありまして、夫婦同一線上に立って協力一致して当るのでなくては、多くの店員や職工等を完全に率いることは出来ないのであります。なんの妻君教育ぐらいと考えますが、実際においてこれはなかなか難しいことであります。かの英傑秀吉すら淀君の我儘を押えることが出来なかった結果、豊臣の天下を早く失ったとも言われて居ります。して見れば徳川十五代の基を築いた家康は妻女教育を完全に成し得たものと言えるかも知れません。ゆえに私は主人学の最高峰はむしろ妻女教育であると申してよろしかろうと考えるのであります。

     二代目の主人学

「売家と唐様で書く三代目」と川柳にもありますが、どうも二代目三代目は難しい。稀には初代の成功のあとを受けて、二代目で大いに発展する家もあるが、多くは二三代で没落する。何故成功者の子孫がそうなるか、二代目は駄目だといっても、その人を見ると決して馬鹿ではありません。むしろ時代が進んでいるだけ初代よりも聡明で、才もあり、一個の社会人としてはなかなか条件が揃っているのを見るのです。それにもかかわらず事業がうまく行かぬのは何故か、
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