一つの欠点になっている場合が少なくないのであります。私の知って居ります某大学教授の夫人は、某会社の重役の娘に生れて、最高の教育を受けた人でありますのに、どういうものか女中等の食物のことを考えてやらないのであります。女中等は仕方がないので、主人夫婦の食い残したもので食事をしているという有様で、これなどもどうせ残るのだろうそれを食っておけばよいのだという考えなのか、何んとしても恥しい話ではありませんか、また相当の店や工場の店員や職人が「おかみさんがケチで食物がわるい」とこぼしているのも、よく聞くところでありまして、粗食の結果、成長期にある少年をして発育不良に陥らしめたり、病気をする者が多いなどという例も少なくないのであります。
 これでは如何に主人学を修業して完全たらんとしたところが何もならない、妻君が傍から破壊して行くのであります。また商売見習に来た小僧に子守のみさせたり、また我儘な子供の相手をさせるのもこれ等の妻君でありまして、子供もこれではいよいよ増長し、店員達を自分の家来のように思うて無理な事などいいつけるようになり、どちらに対してもよろしからぬ結果を来たすのであります。
 ゆえに
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