とが出来るのでありまして、主人は主人であると共に彼等の教育者、また親代りであることを忘れてはならないと思うのであります。
以上でだいたい主人学の一般を尽したかと思いますが、最後になお一つ重要なる問題が残って居ります。それは妻君と協力の問題であります。我々個人の工場や商店にあっては、その妻君の地位は、多くは主人に匹敵し、稀には主人以上の主要な場合さえあります。今日の大三井の基を築いた人は初代の夫人であって、これはもう知らぬ人もありませんが、かの盛大な明電舎も、当主の母君の力でかの盛運を開かれたものであると聞きます。また味の素の鈴木氏の今日の隆盛の源にも、当主のお祖母様の力が大いに加わっていると申します。我々菓子屋の同業中に見ましても、銀座の木村屋の主婦、本郷三丁目岡野の主婦、本所寿徳庵のおばあさんなど、みな主人以上の店の繁栄に力あったものであります。婦人は勤勉で、細心で、注意深く、政治とか相場とかいう道楽もまずありませんから、賢明なる主婦は、往々にして主人以上の働きをする場合があるのであります。
しかしながら、そういう賢明な婦人は別として、一般の婦人は天性つづまやかであるため、それが
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