であります。妻子をも養い兼ねる有様では、不平不満、真剣な働きの出来ないのは、当然のことと言わねばなりません。先頃米国の視察を終えて帰朝されました藤原銀次郎氏の談にも、日本の会社は米国のそれ等の会社に比し三倍の人を使っていると語られて居りましたが、それなら米国人は日本人の三倍の能力があるかというと、決してそうではありません。カリフォルニヤに働く日本人の能率ははるかに米国人を凌ぐと申しますし、その他を見ても日本人は米国人より決して能率の劣る国民ではないのであります。要するに仕方さえよろしければ少なくとも今より三倍の能力を発揮し得る人々を、現在は指導よろしきを得ず、また根本の不満を除くことをせぬために、かく面白からぬ状態においているのでありまして、上に立つ人々の修業の不足は、実にかくの如く大きな不幸を、一般の社会に及ぼすものと考えらるるのであります。大きさにおいてこそ違え、一工場、一商店の主人も、その責任は同じことでありまして、私は事にふれて自己の修業の不足を思い、主人学の修業の必要をいよいよ痛感するのであります。主人自ら主人学の修業が出来て、はじめてそこで部下を善導し、有用の材に仕立てるこ
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