、これを分配するように致しましたところ、彼等も生活の安定を得るとともに長年の習慣の悪しきを悟りまして、その物品の持出しのこと、またコンミッションを取るなどのことは全く根絶いたしまして、その上製造能率が非常に増加致しました。従来職人一日の製造高は十円ないし二十円で、平均して十四円見当でありましたのが、私の所では現在平均四十四五円になって居ります。すなわち三倍の成績をあげているのでありまして、待遇改善から自然にこの好成績がもたらされたのだと私は確信するのであります。
今日大会社や官庁において、仕事の能率がすこぶる低く、だいたい一般民間のそれに比して、三分の一ぐらいの働きより出来ていないと申しますが、もしも上に立つ人々に部下を思うの真実があって、この辺の注意がよく行われましたならば、左様な状態に止まることはなかろうと思われるのであります。大会社等でいわゆる上に立つ人とは、単に大株主とか大財閥の関係者というだけで、幾つかの会社の重役を兼ね、自動車で乗り回しているだけで、毎月数千円もの収入がありましょうが、それに反し、真に力量ある活動力ある秀才が、僅々六七十円の俸給に甘んじていなくてはならぬの
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