見致します。ところがその子孫の代になりまして家運が衰え、ついに破産に陥る例が世には珍しくないのでありまして、これらはその子孫の多くが不肖にして、主人学を知らず、主人らしく行わずしてかえってその反対の事をした結果なのであります。早く言えば苦労知らずの我儘者が主人になったからであります。
主人学の真髄は「部下の心を得ること」であります。昔北条早雲が、兵学者に書を講ぜしめて居りましたが「主将の要は部下の心を得るにあり」というところになりますと「それなれば我はもはや学ぶに及ばず」と言って、その講義を中止せしめたということであります。早雲は、伊豆の一角より身を起して、よく関八州を領有し、北条氏の基礎を築いた名将であります。
工場主、商店主はもちろん、技師長、職長その他何によらず人の上に立つものは、皆々この早雲と同様に、部下の心を得るのでなくては、真の成功におぼつかないのであります。ではどうすれば部下の心を得られるかと申しますと、第一に、
「部下の働きに感謝すること」
であります。工場でも商店でも多勢の人がよく働いてくれてこそ成立っているのであるという心持さえあれば自ずとその働きに対して感謝
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