は、全く使い物などをする余裕がないのであって、得意もまた日頃親切に正当な品物を勉強していれば、それが盆暮の贈り物の有無くらいで機嫌を損じるなどということはあるまいと信ずる。彼の輸出商で有名な森村左市衛門氏は出入りの商人から決して贈り物を受けないという規定を作って実行していると聞く。もし贈り物など受けて情実にからまれ、粗悪な品物をも大目に看過するという弊が起る。得意は不親切になり、店の信用を欠く原因となるから、受けぬことにきめてあるということであるが、真によき心がけと思われる。一般の商人得意ともに森村氏の心がけを持ってもらいたきものである。
商売の快味
田舎の人が都に来て、我等が堂々として小売商売をしているのを見て、つくづく嘆声を残してかような狭苦しい所で、あまり儲かりもしない商売をして、年中あくせくとして何が面白いのであるか、このくらい田舎で働いたならば、年々財産が殖えるばかりである、というのである。しかり彼らがいう如く、何が面白いのであろうか。自分等にも分らぬのであるが、商業は一種の道楽であって利害得失のほかに面白味がある。時々二食で店番をすることもある。また徹夜しても
前へ
次へ
全330ページ中327ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
相馬 愛蔵 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング