かのように御主人から誤解されたこともたびたびありましたが、たいがい事情は右の通りでございますので、自然あのお屋敷に上ることを好まないようになったのでございます、と、自分はこの事実を聞き取った翌日より、断然この屋敷への出入を中止した。
これはその家に出入りする商人のすべてが異口同音にこぼしていることであるが、得意を一軒失う悲しさにいやいやながら皆出入しているのであった。
お得意がかく身勝手にして傲慢の風あるは畢竟東京の商人の卑屈さに原因するのであって、商人それ自身の罪である。東京は昔から高位高官の人、大名華族が住んでいて大威張りをしていた歴史つきの所であるから、これらの人々を相手の商人は、勢いその圧迫を受けて阿諛するようになり、御無理ごもっともで相手の我がままを通させるようになったのである。文明を誇り自由平等をよろこぶ今日、なおこの蛮風は少しも改まらずして、商人は依然卑屈なる幇間的行為を持続しているのである。これに反して、関西地方ことに大阪商人の見識の高いことは素晴しいものである。第一流の旅人宿や料理店では紹介がなければ客を通さないということである。これは大阪は商人が経済界及び社会上
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