もその下げていうことが出来ず、ありのままを言ってしまったのでしたから、当時の中村屋の店としては、分不相応な税金を納めねばならないことになりました。これは何と申しましても私の一生の大失敗であると、いまでも主人の前に頭が上がらないのであります。
よく売れるといっても知れたもので、一日の売上げ小売が十円に達した日には、西洋料理と称して店員に一皿八銭のフライを祝ってやる定めにしていたことによっても、およそその様子は解って頂けると思います。たださえ戦後は税金が上がりますのに、こんなことでは中村屋は立ち行くはずもなく、私のあやまちと申しますか、ともかく自分故こんなことになったと思い、一倍苦しゅう[#「苦しゅう」は底本では「苦しう」]ございました。
「仕方がない、言ってしまったことは取返せません、この上はもっと売上げを増すより道はない。一つ何とか工夫しましょう」
これは[#「 これは」は底本では「これは」]その時、期せずして私ども両人の考えでした。しかしこちらでそう思いましたからと言って、急にそれだけ多く買いに来て下さるものではありませんし、売るには売るだけの道をつけなければなりません。それには
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