夥しい。一日新聞紙上に店員募集の広告をしてみるに、早朝から様々の風態したる中年者の来襲を受け、応接するにいとまなき程である。彼らは如何なる種類の人であるかといえば、たいがいは学生上りの、のらくら者の果てか百姓に生れて百姓仕事を嫌いな田舎者もしくは中途で今までの仕事に厭気がさし、骨が折れずに金の沢山取れる職業に乗り換えんとする横着者であって、いずれも怠け性の者で、仕事に真面目でないこというまでもなく、小僧の欠乏よりせん方なく彼らの一人を採用して見るに、初めその店の事情に疎く、品目さえもまだ呑込むこと能わざるうちは、以前から雇われている一三四歳の小僧の配下にいて、すべての指図を受けねばならぬ。給金も未熟な新参の時代には多く与えられるものでないが、本人はなかなか腹の中で承知しない。また比較的小僧より広く世間を渡って来ているから、うまい物の数も多く知り、巻煙草ものめば、酒ものみ女も知っているゆえ、なかなかはした小遣銭では満足できない。そこで悪い方にはいち早く手が出るようになり、主人の物をかすめるか、あるいは得意先に不都合を働くかして、ついに主家を自らとび出し、あるいは追放されるに至るのである。
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