や使い歩きくらいで生活したほか、勉学の費用まで与えられ、それで成功したものもまれにはあったが、今日の世の中はその時代よりも幾層倍せちがらくなって、堂々たる学士や紳士たちさえ、ただ糊口のために汲々たる有様となった。自分と家族が生活していくだけでも、なかなか容易のことではないのである。
しかるに苦学生諸君はこの辺の消息は少しも御存じなく、東京は広い所で仕事の沢山ある所だから半日仕事して半日勉学の出来る方法は容易に見出し得るものと思って、田舎から押しかけて来る。それで己れの希望を容れて世話してくれる人をば、やれ無頼漢の、しみったれの、と途方もない悪口雑言を叩く不了見者もある。我々は貧民と同様に味噌汁と香の物を食いつつ生活しているものであるのに、ある苦学生諸君は我等の朝食料の幾分を節約して、学資を与えよ、然らざれば汝等は同情の念の欠乏せるものとし、共に道徳を談するに足らぬものとして諦めよう、などと、脅迫めいた手紙を送られることも珍しくないのである。
そこで自分らも一度は境涯を経て来たものであって、また少年時代の学問に志を立てながら、学資の不足なために学問が出来ないと云うことは、その本人に取
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